紺碧に輝くアドリア海、オレンジ色の瓦屋根が連なる中世の街並み、そして幾多の歴史が刻まれた石畳の路地。ヨーロッパの南東部に位置するクロアチアは、一度訪れた者を虜にする魔法のような魅力に満ちた国です。アニメ映画の舞台を彷彿とさせる風景、ユネスコ世界遺産に登録された数々の歴史都市、エメラルドグリーンの湖水が織りなす国立公園の絶景、そして新鮮なシーフードと芳醇なワインが楽しめる美食の宝庫でもあります。
この国が持つ多面的な魅力は、訪れる旅人に尽きることのない感動と発見を与えてくれるでしょう。この記事では、そんなクロアチアへの旅を夢見るあなたのために、国の基本情報から、最も美しい季節に訪れるためのベストシーズン、さらには現地で役立つ実践的な情報まで、旅のプロとして徹底的に解説していきます。さあ、アドリア海の宝石箱を開ける準備はできましたか?まずは、この美しい国がどこにあるのか、地図で確かめてみましょう。
地図で概要を掴んだら、アドリア海の宝石を巡るクロアチア周遊の完全ガイドで、あなただけの特別な旅の計画を立ててみませんか。
クロアチアってどんな国?基本情報で知る「アドリア海の宝石」の素顔

旅の計画を立てる前に、まずクロアチアという国の基本的な特徴を理解しておきましょう。地理や歴史、文化について知ることで、旅の経験がより豊かで意味深いものになるでしょう。
地理と位置 – ヨーロッパの多彩な文化が交差する場所
クロアチアは中央ヨーロッパ、南東ヨーロッパ、そして地中海の境目に位置しています。その地形は、まるで大空を翔ける鳥やブーメランの形に例えられることもあります。西側はアドリア海を挟んでイタリアと向かい合い、北はスロベニアとハンガリー、東側はセルビアとボスニア・ヘルツェゴビナ、南はモンテネグロと国境を接しています。
この国の最大の特徴は、その長大な海岸線にあります。陸地だけで約1,800kmにも及び、加えて大小約1,200の島々が点在しているため、総延長はおよそ6,000kmに達します。変化に富んだこの海岸線が数多くの美しいビーチや入り江、魅力的な島々を生み出しています。
国土は主に三つの地域に分かれており、アドリア海沿岸の「ダルマチア地方」、首都ザグレブを含む北部の「中央クロアチア」、そして東部に広がる広大な平原地帯「スラヴォニア地方」です。多くの観光客が訪れるのはダルマチア地方ですが、ザグレブの洗練された都市の雰囲気や、スラヴォニアの穏やかな田園風景も、クロアチアの多様な表情を垣間見せてくれます。
歴史の概要 – 街並みに刻まれた時代の記憶
クロアチアの街を歩くと、まるで歴史のページをたどっているかのように感じられます。古代から現代に至るまで、多様な文明や国家に支配されてきたため、その影響が色濃く街の風景に刻まれているのです。
古代ローマ時代には、「ダルマティア」という属州として栄えました。スプリットにあるディオクレティアヌス宮殿は、ローマ皇帝が余生を過ごすために建てた巨大な宮殿で、現在も街の中心部に遺構が残り、生活の一部となっています。
中世になると、ヴェネツィア共和国がアドリア海の支配権を握り、ドゥブロヴニクやフヴァル、コルチュラなど沿岸の都市にはヴェネツィア様式の建築や文化が色濃く反映され、その華麗な街並みは多くの訪問者を惹きつけます。
その後、ハプスブルク家のもとオーストリア=ハンガリー帝国の支配を受け、中央ヨーロッパの文化が浸透しました。首都ザグレブには、この時代に建てられた重厚で美しい建築物が数多く見られます。
20世紀に入り、第一次世界大戦後はユーゴスラビア王国の一部となり、第二次世界大戦後はユーゴスラビア連邦社会主義共和国に組み込まれました。そして1991年にクロアチアは独立を宣言し、紛争を乗り越えて現在の平和で美しい国を築きました。
街の石畳や建物の壁に刻まれた紋章のひとつひとつが、クロアチアの複雑で豊かな歴史を物語っています。その歴史を理解することで、目の前に広がる風景がいっそう深く心に響くことでしょう。
人々と文化 – 陽気さと素朴さが共存する国民性
クロアチアの人々は一般的に親切で人懐っこいと評されます。特にダルマチア地方の人々は地中海らしい明るさと開放的な性格を持ち、観光客にも温かく接し、困っていると手を差し伸べることも多いです。一方、内陸部の住民はやや控えめで誠実な印象を与えますが、親しくなれば非常に信頼できる人たちです。
公用語はクロアチア語で、スラブ語派に属します。日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、観光地のホテルやレストラン、店舗では英語が広く通じるため、言葉の壁に困ることはほとんどありません。それでも「こんにちは(Dobar dan / ドーバル・ダン)」や「ありがとう(Hvala / フヴァラ)」など、簡単な挨拶を覚えておくと現地の人との距離がぐっと近くなります。
宗教は国民の多くがカトリックを信仰しており、街中には美しい教会が点在しています。教会を訪れた際は敬意を持ち、静かに見学することがマナーです。
また、旅の楽しみのひとつである食文化も見逃せません。アドリア海沿岸では新鮮な魚介類を使ったグリル料理や煮込み料理が絶品です。イストラ半島はトリュフの名産地として知られ、トリュフを用いたパスタやリゾットはぜひ味わいたい一品です。さらに、クロアチアは意外にもワインの名産地でもあり、ダルマチア地方の赤ワイン「プラヴァツ・マリ」やイストラ半島の白ワイン「マルヴァジア」など、その地域ならではの味覚を楽しめます。
通貨と物価 – ユーロ導入でさらに便利に
クロアチアは2023年1月1日より、自国通貨クーナ(HRK)からユーロ(EUR)へと切り替えました。これにより、多くのヨーロッパ圏からの旅行者は両替の手間が省け、さらに便利になりました。
物価は西ヨーロッパの主要国(フランス、ドイツ、イタリアなど)と比べるとやや抑えられていますが、観光客の増加に伴い徐々に上昇傾向にあります。特に、ドゥブロヴニクやフヴァル島といった人気スポットでは、宿泊費や飲食費が他の都市より高めになる場合があることを意識しておきましょう。
- レストランでのランチ:約15〜25ユーロ
- カフェでのコーヒー:約2〜4ユーロ
- スーパーでの500mlミネラルウォーター:約0.8〜1.5ユーロ
- 市内交通(トラム・バス):約1〜2ユーロ
あくまで参考価格ですが、予算を立てる際の目安にしてください。クレジットカードはホテルやレストラン、大型スーパーのほとんどで利用可能です。ただし、小規模な個人店舗や市場、一部の宿泊施設(B&Bなど)では現金のみの場合もありますので、一定額の現金を持ち歩くことをおすすめします。
旅の計画を立てよう!クロアチア旅行のベストシーズン
せっかくクロアチアを訪れるなら、最も美しく快適に過ごせる時期を選びたいものです。ここでは、季節ごとの特徴と、あなたの旅のスタイルに応じたベストシーズンをご案内します。
初夏と初秋がベストシーズン(5月〜6月、9月〜10月)
多くの旅行の専門家がこの時期を推奨する理由は、気候、混雑度、料金が最もバランス良く整っているからです。
快適な気候
5月から6月は、心地よい日差しと平均気温20〜25度の温暖な気候が続き、街歩きにもぴったりです。海水は少し冷たいかもしれませんが、晴れた日には十分に海水浴が楽しめます。9月から10月は夏の暑さが和らぎ、過ごしやすい気候に戻ります。海水温もまだ温かく、残暑を感じつつリゾート気分を満喫できるでしょう。特に9月は、海の色がもっとも美しいと言われています。
混雑を避けられる
7月や8月のピークシーズンと比較すると、観光客の数がぐっと減るため、ドゥブロヴニクの城壁やプリトヴィツェ湖群国立公園の遊歩道もゆったりと楽しめます。レストランの予約も取りやすく、人気の観光スポットで長時間並ぶことによるストレスも軽減されます。
お得な料金設定
航空券やホテルの料金がピークシーズンに比べて割安になるのも大きなメリットです。同じ予算でより長く滞在したり、ワンランク上の宿泊施設を選択しやすくなります。
6月のラベンダーの香り漂うフヴァル島や、秋のブドウ収穫祭で賑わうイストラ半島など、この時期ならではの魅力も豊富。穏やかな気候の中でクロアチアの自然や文化を存分に堪能したい方にとっては、最適なシーズンと言えるでしょう。
活気あふれるハイシーズン(7月〜8月)
7月と8月はヨーロッパ各地から多くのバカンス客が訪れ、クロアチアが最も活気に溢れる季節です。太陽と海を存分に楽しみたい、賑やかな雰囲気がお好みの方にはぴったりの時期です。
メリット
- 最高のビーチシーズン: 気温は30度を超え、アドリア海はまさに泳ぐのに最適なコンディション。ビーチや島々は多くの人で賑わい、リゾート気分も最高潮に達します。
- 多彩なイベント: スプリット・サマー・フェスティバルやドゥブロヴニク・サマー・フェスティバルなど、各地で音楽や演劇のイベントが多数開催。夜遅くまで街が活気に満ち、祭りのような雰囲気を楽しめます。
- 長い日照時間: 日没が遅いため、一日をたっぷり使えます。夕暮れのマジックアワーを眺めながら、屋外レストランでのディナーは格別です。
デメリットと対策
- 猛暑: 日中の日差しは非常に強烈で、熱中症対策が必須。帽子、サングラス、日焼け止めはもちろん、こまめな水分補給を忘れずに。石畳の反射熱も強いため、体力に自信がない方は涼しい朝晩の時間帯に活動することがおすすめです。
- 混雑: 人気観光地はどこも人であふれます。特にドゥブロヴニクの旧市街はクルーズ船の寄港が重なると、歩くのも大変なほど混雑します。事前にクルーズ船のスケジュールを確認し、その時間帯を避けて動く計画を立てることが重要です。
- 料金高騰: 航空券、宿泊費、レンタカーなど料金が年間で最も高騰します。旅行を決めたら早めの予約が費用抑制の鍵。人気ホテルやアパートメントは数ヶ月前から満室になることもあります。
静かで落ち着いたオフシーズン(11月〜4月)
観光客の喧騒を離れ、本来のクロアチアをじっくり味わいたい方にはオフシーズンもおすすめ。費用を抑え、まるで暮らすような旅を楽しむには魅力的な期間です。
メリット
- 驚くほどリーズナブル: 特に宿泊料金がハイシーズンの半額以下になることも多く、長期滞在を検討している方には理想的です。
- ゆったりとした観光: 観光客が少ないため、世界遺産の街並みや美術館をまるで貸切状態のように静かに鑑賞できます。地元の人との触れ合いも深まるでしょう。
- 冬ならではの魅力: 12月にはザグレブでヨーロッパ有数の美しさを誇るクリスマスマーケットが開かれ、イルミネーションに彩られた街をホットワイン片手に散策する特別な体験が楽しめます。
デメリットと注意点
- 天候の変動: 冬は曇りや雨の日が多く、「ブーラ」と呼ばれる冷たく強い風が吹くこともあります。防寒対策は必須です。
- 沿岸部の休業期間: ダルマチア地方の島々やリゾートは多くの施設が冬季休暇に入ります。フェリーの本数も大幅に減るため、島への移動は事前に十分確認しましょう。
- 楽しみ方の工夫: 観光の中心はザグレブ、スプリット、ドゥブロヴニクなどの都市部。美術館巡りやカフェでのんびり過ごすインドアの過ごし方をメインに計画すると良いでしょう。プリトヴィツェ湖群国立公園も冬季開園しており、雪景色や凍った滝など普段とは異なる幻想的な風景が楽しめます。ただし、遊歩道の一部閉鎖があるため、訪問前に公式サイトで最新情報のチェックを忘れずに。
クロアチア入国と滞在の準備 – これで安心!実践ガイド

旅のプランが決まったら、次は具体的な準備に取りかかりましょう。パスポートの確認から持ち物の準備、現地での資金管理や通信手段に関する情報をまとめました。スムーズな旅を実現するためにお役立てください。
パスポートとビザについての基本事項
クロアチアはEU加盟国であり、シェンゲン協定にも加入しています。そのため、日本のパスポートを持つ方は、観光目的に限り90日以内の滞在でビザは不要です。
しかし、パスポートの有効期限には十分気をつけてください。シェンゲン圏を出国する日の時点で、最低でも3ヶ月以上の残存有効期間が望ましいとされています。また、パスポートの査証欄にはスタンプ用の余白ページが2ページ以上あることも確認しましょう。これらの条件を満たしていないと、航空会社のチェックイン時に搭乗を拒否されたり、入国審査でトラブルになる恐れがあります。出発前に必ず自身のパスポートをしっかりチェックしてください。
さらに、万が一のためにパスポートの顔写真ページと出入国スタンプのあるページをコピーしたり、スマートフォンで撮影した画像を保存しておくことを強くおすすめします。
持っていると便利なアイテム一覧
快適なクロアチア旅行のために必要な持ち物を挙げました。旅行スタイルに合わせて調整してみてください。
- 必携品
- パスポート(有効期限を念入りにチェック)
- 航空券(電子チケットの控えも忘れずに)
- 海外旅行保険証(病気や盗難に備え、必ず加入しておきましょう)
- クレジットカード(主にVISA・Mastercard。JCBは利用できない場所が多いです)
- 現金(ユーロ。少額を携帯しておくと安心です)
- ホテルの予約確認書
- 服装関連
- 歩きやすい靴: クロアチアの旧市街地は石畳や坂道、階段が多いため、スニーカーや歩きやすい靴が欠かせません。
- 羽織もの: 夏でも朝晩は肌寒いことや、店内や公共交通機関の冷房が効いている場合があります。カーディガンや薄手のジャケットを1枚持っておくと便利です。
- 教会や修道院訪問時の服装: 肩や膝を覆う服が必要です。ショートパンツやタンクトップで訪れる場合は、羽織れるストールやパレオを持参するとスマートです。
- 水着: 夏に沿岸地域を訪れるなら必携。ホテルのプールや岩場のビーチで水遊びを楽しみましょう。
- 帽子・サングラス: 強い日差しから身を守るため、紫外線対策として準備を。
- あると便利なグッズ
- 変換プラグ: クロアチアのコンセントはCタイプおよびSEタイプです。日本のAタイプは使えないので、必ず用意してください。
- 日焼け止め: 季節を問わず、特に夏場は必須です。
- 常備薬: 胃腸薬や頭痛薬、酔い止めなど、普段から使い慣れた薬を持参すると安心です。
- ウェットティッシュ・除菌ジェル: 外出先で手を拭く際に便利です。
- エコバッグ: 現地のスーパーではレジ袋が有料のことが多いため、小さく折りたためるエコバッグが重宝します。
- カメラ・モバイルバッテリー: 美しい風景を撮影するために。
通貨(ユーロ)の準備と両替方法
前述したとおり、クロアチアの通貨はユーロです。日本でユーロに両替することも可能ですが、一般的にレートがあまり良くないため、現地での両替がおすすめです。
- 現地の空港や市内の両替所(Mjenjačnica/ムニェニャチュニッツァ): 到着直後に現金が必要な場合は空港で少額を両替し、その後、レートの良い市内の両替所を利用するのが賢明です。「NO COMMISSION(手数料無料)」を掲げている店でも、レートに手数料が含まれていることが多いので、複数の両替所で比較検討しましょう。
- ATMキャッシング: 国際キャッシュカードやクレジットカードを使って現地のATMからユーロを引き出す方法です。レートが良い場合が多く、24時間いつでも利用できるため便利です。利用時には暗証番号(PINコード)が必要なので、出発前に確認しておくことを忘れずに。一括で引き出すほうが手数料節約になります。
クレジットカードの使用が広く普及しているので、多額の現金を持ち歩く必要はありません。現金は少額の支払いやチップ用にとどめ、主にクレジットカードを活用するのが安全かつ賢い方法です。
インターネット環境の確保方法
現地での情報収集や地図の確認、SNS投稿などに欠かせないインターネット。クロアチアで利用するための主な手段をご紹介します。
- 海外用Wi-Fiルーターのレンタル: 日本の空港で受け取り・返却が可能で、設定も簡単。複数人や複数デバイスでの利用に便利です。渡航前に予約しておくのが安心です。
- SIMカードの購入: 現地の空港や街のキオスク(Tisak)、通信会社の店舗(T-Hrvatski Telekom、A1など)で購入可能。比較的安価で大容量のデータ通信が利用できます。スマートフォンがSIMフリーであることが条件となり、自身で設定を行う必要がありますが、店員が手助けしてくれる場合もあります。
- eSIMの活用: 物理的なSIMカードの挿入が不要で、オンライン上で購入・設定を完結できるのが特徴です。eSIM対応のスマートフォンをお持ちの方におすすめ。渡航前に日本で設定しておけば、現地に到着後すぐにネットに接続できます。
ご自身の利用状況やスマートフォンの機種に合わせて、最適な方法を選んでください。
クロアチア国内の移動手段をマスターする
細長い国土に点在する多数の島々を持つクロアチア。効率的に旅をするには、国内の交通手段をしっかり理解しておくことが大切です。
都市間を結ぶ長距離バス
クロアチア国内の移動手段として最も広く利用され便利なのが長距離バスです。鉄道網があまり発達していない沿岸地域を中心に、バス路線が細かく張り巡らされており、主要都市や町のほぼすべてをカバーしています。
- 主なバス会社: 大手にはArrivaやFlixBusがあり、オンライン予約システムも完備されています。
- チケットの購入方法:
- オンライン予約: 各バス会社の公式サイトや、複数の会社を比較できるOmioなどのアプリで事前に予約と支払いが可能です。特にハイシーズンは満席になることも多いため、早めの予約を推奨します。Eチケットはスマートフォンに保存して、そのまま乗車の際に提示できます。
- バスターミナル(Autobusni Kolodvor)の窓口: 都市ごとにあるバスターミナルの窓口で直接チケットを購入できます。乗車日や目的地、出発時間を伝えれば手続き完了です。
- 留意点: スーツケースなどの大きな荷物をトランクに預ける場合、別途1~2ユーロ程度の荷物料金がかかることが一般的で、現金でドライバーに支払います。小銭を用意しておくと便利です。バスは比較的時間通りに運行されますが、夏場の交通渋滞で遅れることもあるため、乗り継ぎの際は余裕をもったスケジュールを心がけましょう。
島巡りに欠かせないフェリーとカタマラン
クロアチアには1,000を超える島々が点在し、フェリーや高速船のカタマランが島への主要な交通手段となっています。青い海を渡る船旅自体が、忘れがたい体験となるでしょう。
- 主なフェリー会社: 国営のJadrolinija(ヤドロリニヤ)は最大の航路網を有しており、大型フェリーから旅客専用のカタマランまで多様な船を運航しています。
- チケットの入手方法: Jadrolinijaの公式サイトやアプリでオンラインで購入可能です。特にスプリット⇔フヴァル島などの人気路線はハイシーズンに売り切れやすいため、計画が決まり次第、早めの予約をおすすめします。港の窓口でも購入できますが、当日は満席のリスクがあることを頭に入れておきましょう。
- フェリーとカタマランの特徴: フェリーは大型で自動車の積載も可能、デッキで潮風を楽しめますが速度はゆっくりめです。一方、カタマランは旅客専用の高速船で所要時間が短い反面、船内での移動に制限があります。目的やスケジュール、旅のスタイルに合わせて使い分けてください。
Jadrolinijaの公式サイトで最新の時刻表や運賃を確認し、計画を立てることをお勧めします。
自由に動けるレンタカー利用
公共交通機関が利用しにくい小さな村や人里離れたビーチを訪れたい場合、レンタカーが圧倒的に便利です。自分のペースで気ままに移動できる自由度は、旅の大きな魅力となります。
- 必要なもの:
- 日本の運転免許証
- 国際運転免許証(ジュネーブ条約に基づくもの)
- パスポート
- クレジットカード
- 注意点:
- 右側通行・左ハンドル: 日本と反対のため、慣れるまでは慎重に運転しましょう。
- ラウンドアバウト: 信号機のない環状交差点が多く、環状内の車が優先されます。
- 駐車事情: 旧市街の中心部は車両の乗り入れが制限されることが多く、駐車スペースの確保に苦労する場合があります。宿泊施設を選ぶ際は駐車場の有無を確認しておくと安心です。
- 国境を越える際: ボスニア・ヘルツェゴビナなど近隣国へドライブする場合、レンタカー会社に追加料金や特別な保険の必要性を必ず確認してください。また、ドゥブロヴニクへ陸路で向かう際は、一部ルートがボスニア・ヘルツェゴビナ領を通ります。
鉄道の利用について
クロアチアの鉄道網はバスに比べて規模が小さく、首都ザグレブからスプリットやリエカといった内陸の主要都市を結ぶ路線はあるものの、アドリア海沿岸の都市間を直接結ぶ鉄道はほとんどありません。ゆったりと景色を楽しみながら移動したい場合や、ザグレブを拠点とする旅行では選択肢に入りますが、利便性の面ではバスの方が勝っています。
知っておきたいクロアチアのルールとマナー

美しい国での滞在を心ゆくまで楽しむためには、現地の習慣やルールを尊重することが非常に重要です。ちょっとした気遣いが、より一層充実した旅の体験につながります。
教会や修道院での服装ルール
クロアチアでは多数の人々が熱心なカトリック信徒であり、教会や修道院は神聖な祈りの場として大切にされています。訪問の際にも、その場にふさわしい服装を心掛けて敬意を表しましょう。
- 肌の露出を控えること: 肩や膝が見えるタンクトップ、ショートパンツ、ミニスカートなどでは入場を断られることがあります。
- 具体的な対策: ノースリーブの場合はカーディガンやストールを羽織る、ショートパンツならパレオなどを腰に巻いて体を隠せるように一枚用意しておくと安心です。入口で衣類を貸し出している場合もありますが、持参するのが確実です。
- その他のマナー: 教会内では帽子を外し、会話は控えめにし、静かに過ごすことが求められます。
チップの慣習について
クロアチアではチップは必須ではありませんが、良いサービスを受けた際に感謝の気持ちを示す習慣があります。渡す際はスマートな対応を心掛けましょう。
- レストランの場合: サービス料が含まれていない場合、合計金額の5〜10%程度が目安です。支払い時にお釣りが出ないように切り上げ、「お釣りは結構です(U redu je / ウ・レドゥ・イェ)」と伝えるか、相当額をテーブルに残す方法があります。
- ホテルの場合: 荷物を運んでくれたポーターや、特別なサービスをしてくれたルームサービススタッフには1~2ユーロ程度を渡すのが一般的です。
- タクシーの場合: 料金の端数を切り上げて支払うスタイルが一般的とされています。
ただし、あくまで気持ちの問題ですので、サービスに満足できなかった場合は無理に支払う必要はありません。
写真撮影に関する注意点
旅の思い出を写真で残すことは楽しみの一つですが、注意すべきポイントもあります。
- 撮影禁止の場所: 軍事施設や国境付近、一部の政府関係施設では撮影が禁止されています。空港や駅の内部も注意が必要です。
- 博物館や教会内: 多くの場所でフラッシュ撮影は禁止されており、作品や建物の保護のためのルールです。また、撮影自体が禁止されている場合もあるため、入口の掲示をよく確認しましょう。
- 人物撮影: 地元の人々を撮影する場合は、必ず一言許可を取るのがマナーです。市場での働く人や民族衣装を着た方など魅力的な被写体が多いですが、無断で撮るのは避けましょう。
持ち込み・持ち出しが禁止されているもの
日本とクロアチア間には、物品の持ち込み・持ち出しに関する規定があります。トラブル回避のため、基本的なルールを理解しておきましょう。
- クロアチア(EU)への持ち込み: EUの規定により、肉製品(ソーセージ、ハム、ジャーキーなど)や乳製品(チーズ、ヨーグルトなど)の個人的な持ち込みは厳しく制限されています。カップラーメンの具材なども対象となる場合があるため注意が必要です。詳細は日本の農林水産省 動物検疫所のウェブサイトでも確認できます。
- クロアチアからの持ち出し: 骨董品や美術品など、文化財と見なされるものを国外に持ち出す際は文化省の許可が必要となります。市場で古い品を購入する場合は特にご注意ください。また、10,000ユーロ相当以上の多額の現金を持ち出す際も申告が義務付けられています。
もしもの時のために – トラブル対処法
どんなに注意を払っていても、海外旅行ではトラブルがつきものです。しかし、あらかじめ対処法を知っておけば、慌てずに冷静に対応できるでしょう。
盗難や紛失に遭った際の対応
ヨーロッパの観光地では、スリや置き引きなどの犯罪が常に警戒すべきものです。もし被害に遭ってしまった場合に備え、手順を把握しておきましょう。
- STEP 1: まずは警察に届け出る
最寄りの警察署(Policija / ポリツィヤ)を訪れ、被害届を提出します。必ず盗難・紛失証明書(ポリスレポート)を発行してもらってください。この書類は、後で説明するパスポートの再発行や海外旅行保険の請求に必要です。
- STEP 2: カードや携帯電話の停止手続き
クレジットカードやデビットカードを盗まれた場合は、直ちにカード会社の緊急連絡先に電話して利用停止を依頼しましょう。スマートフォンが盗難にあったときも同様に通信会社に連絡し、回線を停止してもらいます。これらの緊急連絡先は、旅行前に控えておき、別の場所で保管しておくと安心です。
- STEP 3: パスポート紛失時の対応
これが最も深刻なケースです。まずは落ち着いて在クロアチア日本国大使館へ連絡し、帰国のための「渡航書」を発給してもらう手続きを開始してください。
渡航書発給の流れ:
- 警察で取得した盗難・紛失証明書を用意します。
- 大使館に連絡し、必要な書類を確認します。一般的には、紛失一般旅券等届出書、渡航書申請書、6ヶ月以内に発行された戸籍謄本または抄本、顔写真2枚などが必要です。
- 戸籍謄本は日本から国際郵便で取り寄せる必要があるため時間がかかることがあります。手続きを円滑に進めるため、あらかじめコピーやデータを持参することをおすすめします。
- 大使館での手続き完了後、渡航書が発給されます。
在クロアチア日本国大使館公式サイトには、連絡先や緊急時の対応方法が詳しく掲載されているので、ぜひブックマークしておきましょう。
病気や怪我をした場合
慣れない環境で体調を崩したり、思いがけず怪我をする可能性もあります。
- 海外旅行保険の重要性
日本の健康保険は海外では利用できません。医療費が高額になることもあるため、必ず出発前に海外旅行保険へ加入し、保険証券とサポートデスク連絡先を携帯してください。
- 病院を受診する際
まずは契約している海外旅行保険会社の24時間対応サポートデスクに連絡しましょう。症状を伝えれば、最寄りの提携病院を案内してくれたり、キャッシュレス診療が受けられる病院の手配もしてくれます。自分で病院を探すよりも、まず保険会社に相談するのが安心です。
- 緊急時
命に関わる危険な状況ではためらわず、救急車を呼んでください。クロアチアを含むヨーロッパの緊急通報番号は「112」です。この番号にかけると、救急、警察、消防につながります。
交通機関の遅延やキャンセルについて
バスやフェリーが悪天候や機材トラブルで遅延したり、運休になることも十分考えられます。
- 情報収集を心がける
まずは利用する交通機関の窓口や公式ウェブサイト、アプリで最新の運行状況を確認しましょう。
- 代替手段を検討する
窓口の係員に次の便や別の経路について話を聞くのがおすすめです。特に島へ向かう場合は、他の船会社や異なる港からの便が利用できるかを確認することが重要です。
- 返金や補償の条件を確認する
返金や補償の内容は各社で異なります。チケット購入時の規約をよく読んでおきましょう。悪天候などの不可抗力による運行停止の場合、返金はあっても、代替交通費や宿泊費の補償は通常ありません。こうした予期せぬ出費に備え、海外旅行保険の「旅行変更費用補償特約」などに加入しておくと安心です。
クロアチアの魅力をさらに深掘り!必見の観光スポット

最後に、クロアチアが誇る素晴らしい観光スポットをいくつかご紹介します。これらの場所を訪れれば、きっとクロアチアの魅力に心を奪われることでしょう。
ドゥブロヴニク – 「アドリア海の真珠」と称される城壁散策
クロアチア観光のトップスポットであり、「アドリア海の真珠」として知られる美しい城塞都市です。オレンジ色の屋根と深い青の海の織りなすコントラストは、思わず息をのむほどの絶景を生み出します。街の真髄を味わうには、旧市街を取り囲む約2kmの城壁の上を散策するのがおすすめです。多彩な角度から街並みや海の風景を楽しめ、歩くたびに異なる景色が目の前に広がります。さらに、スルジ山へロープウェイで登れば、絵葉書のようなドゥブロヴニクの全貌を一望できます。
スプリット – 古代ローマの宮殿が息づく歴史の街
クロアチア第二の都市スプリットの中心部は、古代ローマ皇帝ディオクレティアヌスが築いた宮殿の跡地そのものです。世界遺産に登録されたこの宮殿は、単なる遺跡ではなく、いまもなお人々が暮らし、レストランや商店が軒を連ねる賑やかなエリアです。地下ホールやペリスティル(列柱広場)を歩けば、2000年にわたる歴史の壮大さを肌で感じることができるでしょう。海沿いのプロムナード「リーヴァ」での散策も、心地よい時間を過ごせます。
ザグレブ – 活気と歴史が融合する首都の魅力
アドリア海沿岸の華やかなリゾート地とは異なり、中欧の落ち着きを感じさせる首都ザグレブ。歴史的建築が並ぶ「グラデツ(上町)」と、多彩なショップやカフェが集まる「カプトル(下町)」の二つの地区からなっています。特徴的な聖マルコ教会の美しいモザイク屋根、活気あふれるドラツ市場、そして世界最短と言われるケーブルカーなど、見どころが満載です。ユニークな「失恋博物館」も訪れる価値があります。根付くカフェ文化の中で、地元の人々と共にゆったり過ごすのもおすすめです。
プリトヴィツェ湖群国立公園 – エメラルドグリーンに輝く自然美
クロアチアを代表する自然遺産であり、その幻想的な風景で知られる国立公園です。大小16の湖が無数の滝によって段差を作りながら連なっています。石灰華の影響で湖水の色は光の具合でエメラルドグリーンからコバルトブルーに移り変わり、刻々と表情を変える美しさを魅せます。整備された木道を歩きながら、滝のせせらぎや鳥のさえずりに耳を傾けると、まるで異世界に迷い込んだかのような感覚を味わえます。混雑するシーズンは、開園直後か夕方遅めの時間帯の訪問がおすすめです。
フヴァル島 – ラベンダーが香る洗練されたリゾート
「クロアチアのサントリーニ」とも呼ばれる、スタイリッシュで洒落たリゾートアイランドです。美しいビーチはもちろん、中世の趣を残すフヴァル・タウンの散策も魅力的。丘の上の要塞からは赤い屋根の街並みと沖合のパクレニ諸島の絶景が望めます。6月から7月にかけては島全体がラベンダーの紫色に染まり、甘く芳しい香りに包まれます。世界中のセレブリティも訪れるこの島で、少し贅沢な休暇を満喫してみてはいかがでしょうか。

