風が丘を駆け抜け、バグパイプの音色が遠く響き渡る。深い霧に包まれた古城、琥珀色に輝くウイスキー、そしてどこまでも続く荒涼として美しいハイランドの風景。スコットランドという言葉の響きには、どうしてこうも旅人の心を捉えて離さない魔法が宿っているのでしょうか。こんにちは、旅サイトのライター、万里です。幼い頃から地図と時刻表を眺めるのが好きで、特にレールの響きには目がありません。今回は、そんな私が心から愛する地、スコットランドのモデルコースを、あなたの旅の日程に合わせて徹底的に解説していきたいと思います。
短い滞在で二大都市の魅力を凝縮して味わうプランから、レンタカーや鉄道を駆使して雄大な自然の奥深くへと分け入る長期プランまで。この記事を読み終える頃には、あなたのスコットランドへの旅は、もう具体的な計画へと変わっているはずです。チケットの予約方法から、現地での服装、万が一のトラブル対応まで、旅の「知りたい」をすべて詰め込みました。さあ、一緒に遥かなる北の大地への旅路を思い描いてみましょう。
スコットランド旅行の基本情報:旅の準備を始めよう

壮大な旅に出る前に、まずは基本となるポイントを押さえておきましょう。スコットランドの気候や文化について理解を深め、しっかりと準備を整えることで、旅の充実度が何倍にも高まります。
旅の最適なシーズンはいつ?
スコットランドの魅力を存分に楽しみたいなら、日照時間が長く気候も安定しやすい5月から9月がおすすめです。特に初夏には、ハイランドの丘陵地帯がヘザーの花で紫色に染まり、その美しさは息を呑むほどです。8月には世界最大級の芸術祭「エディンバラ・フェスティバル・フリンジ」が開催され、街全体が祝祭ムードに包まれ、最も活気あるシーズンとなります。
一方で、冬のスコットランドにも独特の魅力があります。観光客が減り静けさが漂う古城は、より一層荘厳な雰囲気を醸し出します。運が良ければ北部でオーロラを見ることも可能ですし、暖炉のそばでゆっくりとウイスキーを楽しむ時間は格別のひとときです。旅の目的に応じてシーズンを選ぶのもまた楽しみの一つと言えるでしょう。
通貨・物価、支払いの事情
スコットランドの通貨はイギリスの他地域と同様にイギリス・ポンド(GBP/£)が用いられます。ただし、スコットランドの銀行が発行する独自の「スコットランド・ポンド」紙幣も流通しており、デザインは異なりますが価値は同じです。イングランドやウェールズでも問題なく使えますが、稀に小規模な店で受け取りを断られることがあるため注意が必要です。逆に、イングランド銀行発行のポンドもスコットランドで問題なく利用可能です。
物価は日本の大都市と同程度か、やや高めに感じるかもしれません。特に宿泊費や外食料は、少し多めに見積もっておくと安心です。スコットランドはカード社会が進んでいるため、ほとんどの店舗や公共交通機関でクレジットカードやデビットカードが使えます。タッチ決済も広く普及しており、少額の支払いもスムーズです。ただし、念のため現金も少量用意しておくと、小さな村の個人商店などで役立つことがあります。
旅の成功を左右する服装と持ち物リスト
スコットランドには「一日の中に四季がある」という言葉がありますが、これは決して誇張ではありません。朝は晴れていても、昼には急に雨が降り出したり、夕方には強い風が吹くことも珍しくありません。この気まぐれな天候に対応できるかどうかが、旅の快適さに大きく影響します。
必携の服装アイテム
- 防水・防風機能を備えたアウター: 最も重要なアイテムです。ゴアテックスなどの高性能ジャケットが一着あると、突然の雨や風をしっかり防げます。フード付きのタイプがおすすめです。
- レイヤリングしやすい服装: 体温調節がしやすいよう、薄手のフリースやセーター、長袖シャツなどを重ねるスタイルが基本です。昼間は暖かくても朝晩は冷え込むため、着脱が簡単な服装が快適です。
- 歩きやすく防水の靴: 石畳の多い街並みやハイランドのぬかるんだ地形を歩くことを考慮すると、履き慣れた防水性のウォーキングシューズやトレッキングシューズが最適です。おしゃれな革靴やヒールは、特定のレストラン訪問時などを除きほとんど必要ないでしょう。
- 帽子・手袋・マフラー: 夏でもハイランド地方や海沿いは風が冷たいことがあり、とくに冬場はこれらの防寒具が欠かせません。
あると便利な持ち物
- 変換プラグ(BFタイプ): 日本と異なる電源環境(230V/50Hz)への対応が必要です。使用する電化製品の海外対応可否を必ず確認してください。
- モバイルバッテリー: スマホで地図や写真撮影を多用するためバッテリー消耗が激しいです。大容量のものを携帯すると安心です。
- 虫除けスプレー: 初夏から夏のハイランド、特に水辺には「ミッジ」と呼ばれる小さなブヨが大量発生します。非常に厄介なため、現地の薬局で強力な虫除けスプレーを購入するのがおすすめです。
- 酔い止め薬: ハイランドの曲がりくねった道路を走るバスや、島へ渡るフェリーなどの乗り物酔いが心配な場合は持参しましょう。
- 折りたたみ傘: 小雨程度ならフードで対処する人も多いですが、街歩き時にあると便利です。ただし風が強いことが多いため、頑丈な作りのものを選ぶのが望ましいです。
【3泊4日】エディンバラとグラスゴーを巡る!スコットランド二大都市満喫プラン
まずは、短い日程でもスコットランドの魅力をぎゅっと詰め込んだ、二大都市を巡るモデルプランをご案内します。歴史と格式が息づく古都エディンバラ、そして文化と芸術で息づく活気あふれるグラスゴー。対照的な二都市の魅力を効率よく満喫しましょう。
1日目:古都エディンバラに到着、旧市街の空気に馴染む
エディンバラ空港に着いたら、旅の幕開けです。市街中心部への移動はシンプルで、大きく二つの手段があります。
- トラム: 空港と中心街のプリンシズ・ストリートを直結。渋滞もなく、約35分で到着します。乗り場の券売機で手軽にチケットを買えます。
- エアリンクバス(100番): 24時間運行で、約30分ほどでウェイヴァリー駅に到着。トラムより料金が少し安く、荷物置き場も広めなのが特徴です。
ホテルにチェックイン後は、早速ユネスコ世界遺産の旧市街(オールド・タウン)散策へ。まずは街の象徴ともいえるエディンバラ城へ足を運びましょう。急峻な岩山の上に鎮座するその威容は、言葉を失うほどの迫力です。
Do情報:エディンバラ城は事前予約が必須!
スコットランドで最も人気の高い観光スポットの一つであるエディンバラ城は、チケット売り場が常に長蛇の列になります。時間を無駄にしないためにも、必ず公式サイトから日時指定チケットを事前に予約しておきましょう。特に夏のハイシーズンは、数日前には売り切れてしまうことも珍しくありません。予約すれば、指定した時間にスムーズに入場可能です。 公式サイトはこちら:Edinburgh Castle Official Website
城内では、スコットランド王家の至宝「オナーズ・オブ・スコットランド」や、歴代の王が戴冠式に用いた「運命の石」を見学可能。城壁から見下ろすエディンバラの市街地は、これから始まる旅の期待感をより一層高めてくれます。
城見学の後は、エディンバラ城からホリールードハウス宮殿へと続くメインストリート、ロイヤル・マイルをのんびりと散策しましょう。石畳の道に歴史ある建造物、バグパイプの奏でる旋律が街全体を包み込み、まるで中世へタイムスリップしたかのような気分に浸れます。タータンやカシミアの専門店、個性的なパブやウイスキー専門店が並び、歩くだけで心が弾みます。
夕食は伝統的なパブがおすすめ。定番のフィッシュ&チップスやミートパイを味わいながら、地元醸造のエール「エール・オブ・アラン」などをぜひお試しください。
2日目:エディンバラの歴史と文化をじっくり味わう
2日目はエディンバラの文化的な魅力をより深く探訪しましょう。朝一番はロイヤル・マイル東端にあるホリールードハウス宮殿が最適です。現在も英国王室がスコットランド訪問時に滞在する公式の居城として使われており、悲劇の女王メアリー・スチュアートの住まいなど、激動のスコットランド史を身近に感じられます。
午後は少し足を伸ばし、スコットランド国立博物館を訪問。自然史から文化、科学技術まで幅広く展示された宝庫です。世界初のクローン羊「ドリー」のはく製や、古代ピクト人の石彫、マッキントッシュのデザイン作品など、多彩な展示が無料で楽しめます。
身体を動かしたい方は、ホリールードハウス宮殿の裏手に広がるホリールード公園へ。公園内の小高い丘「アーサーの玉座」へのハイキングもおすすめです。頂上までは30分から1時間ほどの道のりで、エディンバラの街並みとフォース湾の絶景を360度で堪能できます。ただし岩場が多いため、必ず歩きやすいスニーカーで挑んでください。サンダルやヒールは危険です。
夜は、エディンバラならではの体験としてゴーストツアーに参加するのも面白いでしょう。街に息づく多くの幽霊伝説をテーマに、ガイドが地下墓地や薄暗い路地を案内。歴史の裏側に迫るスリリングな夜の散策が楽しめます。
3日目:列車でグラスゴーへ、芸術と音楽の街を楽しむ
3日目はスコットランド最大の都市、グラスゴーへ移動。エディンバラのウェイヴァリー駅からグラスゴーのクイーンストリート駅までは、スコットレール(ScotRail)の急行で約50分。日本の都市間移動と同様に気軽に利用できます。
Do情報:鉄道チケットは賢く事前購入を
スコットランド鉄道のチケットは駅窓口や券売機でも購入できますが、ScotRailの公式サイトやアプリから事前に手配すると便利でお得です。特に往復(Return)やオフピーク(平日の混雑時間を避けた時間帯)チケットを選ぶと料金が割安になります。購入後はスマホのQRコードで改札を通るため、乗り降りもスムーズです。
グラスゴーに到着すると、エディンバラとは異なる活気と雰囲気を感じることでしょう。産業革命期に急成長したエネルギッシュな街で、人々は親しみやすく、街中にはモダンな建造物や鮮やかなストリートアートが溢れています。
まずは市内西部のケルヴィングローブ美術館・博物館へ。絵画や彫刻、武具から動物のはく製まで幅広いコレクションが揃う「なんでも博物館」です。ダリの『十字架の聖ヨハネ』やスコティッシュ・カラリストの色鮮やかな作品は一見の価値あり。こちらも入場無料です。
次に、グラスゴーの誇るゴシック建築の傑作、グラスゴー大聖堂を訪ねましょう。宗教改革の荒波をくぐり抜けた希少な中世建築で、その荘厳な空気に圧倒されます。併設の墓地「ネクロポリス」から見下ろす大聖堂の景色も大変美しいです。
また、グラスゴーを語る上で欠かせない建築家、チャールズ・レニー・マッキントッシュの作品も必見。彼がデザインした「ウィロー・ティールームズ」で優雅なアフタヌーンティーを楽しみ、再建中ながら外観見学が可能なグラスゴー芸術大学にも足を運んで、その独創的な世界観に触れてみましょう。
4日目:グラスゴーの活気を満喫しつつ帰路へ
帰国便の時間まで、グラスゴーの街をもう少し満喫しましょう。市街中心のブキャナン・ストリートは活気に満ちたショッピングエリアで、最新のファッションやスコットランドならではの特産品が手に入ります。お土産探しにもピッタリの場所です。
あるいは地下鉄のサブウェイを使い、グラスゴー大学付近のウエスト・エンド地区を散策するのもおすすめ。ハリー・ポッターのホグワーツ城のモデルとも言われる美しいキャンパスは、散策するだけで知的な雰囲気に包まれます。
名残惜しい気持ちを胸に、やがてグラスゴー空港へ向かいましょう。市街中心部から空港までは専用のエアポート・エクスプレスバスが頻繁に運行し、約15分で到着します。歴史と現代が融合したスコットランド二大都市の魅力を胸に、素敵な旅を締めくくってください。
【5泊6日】ハイランドの絶景と蒸溜所を巡る!レンタカーで自由気ままな冒険旅

スコットランドの真髄は、その壮大な自然にこそあります。そう感じるあなたには、レンタカーを使ってハイランドを自由に巡る旅がおすすめです。公共交通機関では訪れにくい絶景スポットや隠れた名所へ気軽に足を運べるのが、このプランの最大の魅力です。
必須情報:スコットランドでのレンタカー運転のポイント
- 国際運転免許証: 日本で発行された国際運転免許証、日本の運転免許証、パスポート、クレジットカードを必ず携帯してください。
- 左側通行: 日本と同じため、比較的すぐに慣れるでしょう。
- ラウンドアバウト: 信号のない環状交差点で、時計回りに進行し右側から来る車が優先です。進入時は必ず右側をよく確認し、安全な隙間ができるまで待ちましょう。
- 道路の種類: 主要都市間を結ぶ「M」(モーターウェイ)や「A」(Aロード)は整備されていますが、ハイランドに入ると道幅の狭い「B」(Bロード)や、すれ違いが必要な「シングル・トラック・ロード」が増えます。すれ違い用の駐車スペース(パッシングプレイス)を上手に活用することが大切です。対向車が待ってくれていたら、手を挙げて礼儀正しく挨拶しましょう。
- 動物への注意: ハイランドでは羊が道路をのんびり横断する光景が日常的です。決してクラクションを鳴らさず、彼らが渡り終えるのを待ってください。また、鹿の飛び出しにも気をつけましょう。
- ガソリンスタンド: ハイランドではガソリンスタンドの間隔が非常に広いため、燃料計が半分になったら次の町で給油する心構えを持つと安心です。
1日目:エディンバラから歴史の舞台スターリングへ
エディンバラ空港もしくは市内の営業所でレンタカーを受け取り、北へ向かって出発します。最初の目的地は、かつてスコットランド王国の首都が置かれた古都スターリング。エディンバラから車で約1時間の距離です。
ここでの見どころは、もちろんスターリング城。エディンバラ城と同様に岩山の上に築かれた難攻不落の要塞であり、スコットランド独立に貢献した英雄ロバート・ブルースや、女王メアリー・スチュアートゆかりの地でもあります。城内では当時の宮廷生活が再現されており、歴史を肌で感じられます。
城の近くにそびえるのは、もう一人の英雄ウィリアム・ウォレス(映画『ブレイブハート』の主人公)を記念したウォレス・モニュメント。246段の螺旋階段を登りきると、スターリングの古戦場や美しい田園風景が一望でき、スコットランドの歴史の重みを実感できるでしょう。
2日目:「嘆きの谷」グレンコーを抜け、西の拠点フォートウィリアムへ
2日目は、いよいよハイランドの核心部へと進みます。スターリングから北西へ車を走らせるにつれて、景色は次第に険しくなります。目的地は、スコットランドで最も美しくかつ悲劇的な場所として知られるグレンコー(Glencoe)です。
1692年にマクドナルド一族が虐殺された歴史を持つこの谷は、「嘆きの谷」とも称されます。しかしその悲しい物語とは対照的に、氷河が削ったU字谷の両側にそびえるスリー・シスターズなどの山々は、神々しいまでの美しさを誇っています。車を停めて谷間を吹き抜ける風を感じつつ、しばしその絶景に心を奪われることでしょう。短めのハイキングコースも整備されているので、ぜひ歩いてみてください。
グレンコーを抜けると西ハイランドの中心地、フォートウィリアムに到着します。ここはイギリス最高峰のベン・ネヴィス山(1,345m)への登山口として名高い町です。規模は小さいものの、登山用品店やパブ、レストランが充実し、旅の疲れを癒すには最適なスポットです。
3日目:ジャコバイト号の舞台、グレンフィナン高架橋とスカイ島へ
3日目は旅のハイライトの一つが待っています。フォートウィリアムから「アイルズへの道(Road to the Isles)」と呼ばれる風光明媚なA830号線を西へ進みます。目指すは映画『ハリー・ポッター』のホグワーツ特急の撮影地として有名なグレンフィナン高架橋。
美しい弧を描くコンクリート製の橋を黒煙を吐きながら走る蒸気機関車「ジャコバイト号」の姿は、まさに絵に描いたようなファンタジーシーンです。この光景を見るには、ジャコバイト号の運行時刻を事前に調べることが不可欠です。列車は夏季限定の運行で、通常は午前と午後に1日2往復。通過の30分前には丘の上の展望スポットに着いておくのがおすすめです。最新情報はジャコバイト号公式サイトでご確認ください。
感動の瞬間を写真に収めた後、更に西へ進み、港町マレイグへ。ここからはカレドニアン・マクブレイン社のフェリーに乗り込み、車ごと約45分の船旅で天空の島、スカイ島へ渡ります。なお、マレイグを経由せずに、南側からスカイ・ブリッジを渡って島に入るルートもあります。
4日目:神秘のスカイ島を一日かけて巡る
スカイ島はその名の通り、まるで異世界のような神秘的な風景が広がっています。天候が非常に変わりやすく、一日のうちに晴れたり霧が立ち込めたり雨が降ったりと多彩な表情を見せるのが特徴。こうした変化に富んだ気候が、スカイ島のドラマチックな景観を生み出しているのです。
スカイ島の必訪スポット
- オールド・マン・オブ・ストー: 老人のように見える突き出た奇岩で、スカイ島を代表する名勝。駐車場から往復約2時間のハイキングで岩の麓まで行けます。
- キルト・ロック: 海へと流れ落ちる滝と、スコットランド伝統衣装のキルトのプリーツを思わせる柱状節理の崖が織りなす絶景スポット。
- クイライン: 大規模な地滑りでつくられた多様な奇岩が並ぶエリアで、写真を撮るどの角度も絵になる壮大な風景が楽しめます。
- フェアリー・プールズ: クーリン山脈の麓にある透明度抜群の泉と滝の連なりで、まるで妖精が水浴びをしているかのような美しさ。冷たい水に足を浸すのも良い思い出になるでしょう。
注意点:スカイ島旅行のポイント
スカイ島は世界中からの観光客に人気ですが、宿泊施設やレストランの数は限られています。特に夏季は数ヶ月前から予約が埋まることが多いため、宿泊は必ず早めに予約してください。また、島内の道は狭く観光シーズン中は混雑しやすいため、余裕を持ったスケジュールを心がけ、無理な追い越しなどは避けましょう。
5日目:ネス湖とインヴァネス、そしてウイスキー街道の旅へ
スカイ島での幻想的な一夜を過ごしたあと、スカイ・ブリッジを渡り本土へ戻ります。東へ向かう途中、是非立ち寄りたいのが絵画のように美しいアイリーン・ドナン城。湖に浮かぶ姿は数多くの映画やカレンダーでもお馴染みです。
そしていよいよ伝説の湖、ネス湖へ。南北に約37kmにわたるイギリス最大の淡水湖で、その目的はもちろん未確認生物ネッシーの探検!湖畔のフォート・オーガスタスやドラムナドロキットから出航するクルーズ船に乗り、湖上から探してみましょう。湖岸に佇むアーカート城の廃墟も、ネス湖の神秘的な雰囲気をさらに高めています。
ネス湖を後にして、ハイランド地方の中心都市インヴァネスを経由し、ウイスキー愛好家の聖地であるスペイサイド地方へ向かいます。この地域は、スコットランドで最も多く蒸溜所が集まるエリアで、「グレンフィディック」や「グレンリベット」など世界的に知られるシングルモルトの産地です。
注意点:蒸溜所見学のポイント
- 予約は必須: 多くの蒸溜所では見学ツアーが開催されていますが、人気の蒸溜所では事前予約が必要です。公式サイトからオンライン予約を行いましょう。
- ドライバーは試飲禁止: スコットランドの飲酒運転規制は非常に厳しく、日本の感覚で「一杯だけなら」と考えるのは危険です。ドライバーは試飲を控え、代わりに「ドライバーズ・パック」という試飲用ミニボトルをもらう方法があります。
- ツアーの種類: 製造工程を見学する基本的なツアーから、希少な原酒のテイスティングができる専門的なツアーまで多彩です。興味や予算に応じて選びましょう。
6日目:歴史の古戦場を訪ねて旅の締めくくり
旅の最終日。スペイサイドから帰路につく前に、スコットランド史の重要な転換点となった場所を訪れます。インヴァネスの東に位置するカロデン古戦場は、1746年にジャコバイト軍がイングランド政府軍に決定的な敗北を喫した場所です。荒涼とした野に並ぶクランたちの墓石が、重く静かな歴史を物語っています。
歴史に思いを馳せた後は、インヴァネス空港から飛行機で、あるいは再び車を走らせてエディンバラやグラスゴーへと戻り、旅に幕を下ろします。自らハンドルを握り、ハイランドの風を全身に浴びたこの6日間の旅は、きっと心に深く刻み込まれることでしょう。
【7泊8日以上】鉄道で巡るスコットランド周遊!マニア心くすぐる決定版プラン
さて、ここからは鉄道愛好家である私、万里の真骨頂を発揮します。スコットランドの鉄道路線網は、決して迷路のように張り巡らされているわけではありませんが、その一つ一つの路線が乗車するだけで感動的な絶景を堪能できる、まさに「乗ること自体が旅の目的」となる体験を提供してくれます。レンタカーの運転に自信がない方や、ゆったりと車窓の景色を楽しみたい方にぜひおすすめしたいプランです。
Do情報:スコットランドの鉄道パスを賢く活用しよう
長距離を鉄道で移動するなら、乗り放題パスの活用が圧倒的にお得です。「スピリット・オブ・スコットランド・パス」は、4日間または8日間の指定期間内で、スコットレールのほぼ全路線に加え、一部のバスやフェリーも乗り放題となる頼もしいパスです。購入はScotRailの公式サイトから可能。旅の計画を立てたら、移動費と比較しながら賢く利用しましょう。
Do情報:列車の遅延や運休時の対処法
スコットランドの鉄道は概ね時刻通り運行していますが、悪天候や線路の保守作業により遅延や運休が起こる場合もあります。そうした際は、駅の電光掲示板やアナウンスで最新情報が案内されます。代替バス(Rail Replacement Bus)が用意されることも多いです。大幅な遅延時には、「Delay Repay」という制度により運賃の一部または全額が返金されることがあります。返金申請には切符の提示が必要なので、必ず紛失しないよう保管してください。詳細はScotRail公式サイトで確認できます。
1-2日目:歴史あるエディンバラを拠点に旅のスタート準備を
旅の初日はやはりエディンバラから。最初の2日間は3泊4日プランに沿い、エディンバラ城やロイヤル・マイルといった名所をじっくり巡ります。鉄道旅ならではの視点として、ウェイヴァリー駅から少し足を伸ばして、世界遺産にも登録されているフォース橋を訪れるのもおすすめです。1890年完成のこの壮大な鉄道橋は、ヴィクトリア朝時代の技術の粋を集めた建築物で、その機能美と雄大な構造は見る者に深い感銘を与えます。
3日目:名高い絶景路線ウェスト・ハイランド線でフォートウィリアムへ
3日目からいよいよ本格的な鉄道の旅が始まります。グラスゴー・クイーンストリート駅から、ウェスト・ハイランド線に乗り込み、フォートウィリアムを目指しましょう。この路線は多くの鉄道ファンから「世界で最も美しい鉄道路線」と絶賛され、途切れることなく続く絶景が最大の魅力です。
列車がグラスゴーの市街地を抜けると、車窓に広がる美しいローモンド湖が目に入ります。そしてクライアンラリック駅を過ぎると、広大で人家もほとんどない湿原地帯のランノッホ・ムーアが姿を現します。ここでは一本の線路だけが荒野を貫き、果てしなく続く地平線、小さな湖(ロッハン)が点在し、刻々と変わる空模様を眺めることができます。まるで世界の果てを訪れたかのような孤独で神聖なひとときを味わえるのです。この景色こそ、鉄道でしか堪能できないスコットランドの原風景と言えます。
4日目:憧れのジャコバイト蒸気機関車に搭乗!
フォートウィリアムで一泊し、この日は旅行の最大の見どころ、ジャコバイト蒸気機関車に乗車します。先に紹介したレンタカープランでは外観を楽しみましたが、今回は実際にフォートウィリアムからマレイグまでの往復をこの列車で旅します。
轟く蒸気の音、客車内に漂う石炭の香り、窓外を流れる雄大なハイランドの風景が五感を刺激します。グレンフィナン高架橋を渡る瞬間には、車内のあちらこちらから歓声が湧き上がるほど。まるで自分がホグワーツの生徒になったかのような、魔法のようなひとときがあなたを待っています。
Do情報:ジャコバイト号のチケット予約は最優先!
この列車の人気は非常に高く、チケットは数ヶ月前に完売するのが当たり前です。スコットランド旅行を決めたら、まず最初に公式サイトからジャコバイト号のチケットを予約しましょう。特に窓側の席を確保したい場合は、一日でも早い予約が必須です。
5日目:バスとフェリーでスカイ島へと足を伸ばす
マレイグに着いたらフェリーに乗り換え、スカイ島へと渡ります。島に着いた後の移動はどうするのか心配な方もご安心ください。スカイ島では主要観光地を巡るバスツアーが豊富に催行されています。港町ポートリーを拠点にこれらのツアーを活用すれば、レンタカーなしでも効率良く島を巡ることが可能です。または路線バスを乗り継ぎ、自分のペースでのんびり旅するのも楽しいでしょう。
6日目:もうひとつの絶景路線、カイル・オブ・ロハルシュ線でインヴァネスへ向かう
スカイ島の旅を満喫したら、スカイ・ブリッジを渡って本土のカイル・オブ・ロハルシュへ。ここからインヴァネス行きの列車に乗車します。このカイル・オブ・ロハルシュ線(通称カイル・ライン)もウェスト・ハイランド線に負けない見事な絶景路線です。
湖や入り江のすぐそばを走るこの路線からは、穏やかな水面とハイランドの山々が織りなす幻想的な風景が続きます。特にアハナシーン駅付近の荒涼とした景色は圧巻で、約2時間半の列車旅があっという間に感じられることでしょう。
7日目:インヴァネスとネス湖の探索を楽しむ
ハイランド地方の中心都市インヴァネスに到着。この日はバスツアーなどを利用し、ネス湖へ足を伸ばしてネッシー探しとアーカート城の見学を堪能します。インヴァネスの街自体もネス川沿いを散策するのに適した、落ち着いた美しい街並みが魅力です。
8日目:ハイランド本線でエディンバラへ、そして帰路につく
インヴァネスからエディンバラへはハイランド本線を利用して南下します。カイル・ラインとはまた異なる、カリーニャンズ国立公園の壮大な山岳風景を車窓から楽しめるルートです。
旅の締めくくりに特別な体験を望む方は、ロンドン行きの夜行列車「カレドニアン・スリーパー」の利用もおすすめです。インヴァネスを夜に出発し、個室寝台でゆったり揺られながら眠れば、翌朝にはロンドンのユーストン駅に到着。スコットランドの旅の余韻に浸りながら、優雅に旅の終わりを迎えられます。
スコットランド旅行で役立つTips

モデルコースに加えて、旅をよりスムーズで楽しいものにするためのちょっとしたコツをいくつかご紹介します。
スコットランドの美味を味わおう
スコットランド料理と聞いてもあまりイメージが湧かないかもしれませんが、この国には新鮮な食材を生かした素朴でおいしい料理が豊富にあります。
- ハギス: スコットランドの代表的な郷土料理です。羊の内臓をオートミールやスパイスと混ぜ、羊の胃袋に詰めて茹でたもの。見た目は驚くかもしれませんが、スパイシーで深い味わいがクセになります。ぜひ「ニープス(カブ)とタティーズ(ジャガイモ)」のマッシュポテトを添えてお試しください。
- シーフード: 海に囲まれたスコットランドは、豊かなシーフードの宝庫です。とくにスモークサーモンやクリーミーな魚介のスープ「カレン・スキンク」、ワイン蒸しのムール貝は絶品です。
- スコッチ・ブロス: 大麦や野菜、羊肉をじっくり煮込んだ栄養満点の伝統的スープで、冷えた体をしっかり温めてくれます。
- ウイスキー: 世界的に有名なスコッチウイスキーは、パブで多種多様に取り揃えられています。お好みを伝えれば、バーテンダーが最適な一杯を提案してくれるでしょう。
通信環境についてのポイント
都市部のホテルやカフェ、公共施設では無料Wi-Fiが利用できるところが多いです。一方で、ハイランド地方や島嶼部では電波状況が不安定な場所もあります。常時インターネット接続が必要な場合は、日本で海外用Wi-Fiルーターをレンタルするか、現地でプリペイドSIMカードを購入、もしくはeSIMを活用するのがおすすめです。
安全に旅を楽しむための注意点とトラブル対処法
スコットランドは比較的治安が良い国ですが、油断は禁物です。
- 都市部での注意: エディンバラやグラスゴーなどの都市部では観光客を狙ったスリや置き引きが発生しています。貴重品は体の前に持つバッグに入れ、レストランなどで席を離れる際は荷物を置いたままにしないなど、基本的な防犯対策を忘れないようにしましょう。
- ハイキング時の注意: ハイランドでのハイキングは素晴らしい体験ですが、急な天候の変化に備えることが必要です。防水・防寒具、地図、コンパス、食料や水など十分な装備を持ち、自分の体力に合ったコースを選びましょう。また、どのルートを通り、何時に戻るかを必ずホテルのスタッフなど責任ある人に伝えておくことが重要です。これは英国のハイキングの基本ルールである「Tell a responsible person your route(責任ある人にルートを伝える)」にあたります。
- 緊急連絡先: 警察、救急、消防の緊急番号は999です。
- パスポートを紛失した場合: 万が一パスポートを紛失または盗難にあったら、まず最寄りの警察署で紛失・盗難証明書を取得してください。その後、在エディンバラ日本国総領事館に連絡し、再発行もしくは「帰国のための渡航書」発給の手続きを行います。連絡先や必要書類は事前にメモしておくと、いざという時に慌てずに対応できます。
風が誘う、次なる旅路へ
エディンバラの石畳を踏みしめる足音、ハイランドを渡る風の香り、パブで交わされる賑やかな会話、そして車窓から広がる果てしない荒野。スコットランドの旅は、五感すべてに深く刻まれる、かけがえのない思い出となるでしょう。
今回ご紹介したモデルコースは、一例の提案に過ぎません。あなたの関心やスケジュールに合わせて、自由にアレンジしてください。ウイスキー蒸溜所だけを巡る旅や、ゴルフ発祥の地セント・アンドリュースを訪ねる旅、さらには北のオークニー諸島やシェトランド諸島への冒険旅行など、スコットランドは訪れるたびに新たな魅力を見せてくれる奥深い土地です。
旅の計画を練る時間も、旅そのものと同じくらい心躍る瞬間です。時刻表を開き、地図を広げて、遥かなる北の大地に思いを馳せる。その先にあるのは、きっとあなたの人生を豊かに彩る、貴重な体験でしょう。さあ、次の列車はもう間もなくやってきます。あなたのスコットランド物語を、ぜひ紡ぎ始めてください。