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ドロミーティの旋律を聴け!ベストシーズン、服装、持ち物完全ガイド|魂揺さぶるアルプスの絶景へ

鍵盤を叩く指先が空を切り、僕は音楽から逃げ出した。行き着いた先は、ウィーンでもプラハでもない、イタリア北東部に広がる巨大な石灰岩のオーケストラ、ドロミーティだった。ここでは風が弦を奏で、雪解け水が打楽器のように岩を叩き、聳り立つ山々は壮大なコーラスを歌い上げる。ストリートに寝転び、星空の楽譜を眺める日々。そんな僕、Leoが、このドロミーティという名のシンフォニーを最高の席で聴くための、つまり最高の旅をするための全てを、君に伝えようと思う。ここはただの山じゃない。地球が作曲した、魂を揺さぶる生きた音楽そのものだ。まずは、この壮大なステージがどこにあるのか、その目で確かめてみてほしい。

目次

ドロミーティ、魂のキャンバス

ドロミーティ。その名を口にするだけで、どこか神話のような響きを感じるのではないだろうか。イタリア北部のアルプス山脈の一角を成すこの山々は、その姿に独特の異質さが漂う。太古の海に堆積したサンゴ礁が隆起して形成されたとされるこれらの峰は、一般的なアルプスの鋭い山容とは異なり、白色や時にピンクに輝く特有のドロマイト(苦灰岩)から構成されている。フランスの地質学者デオダ・ド・ドロミューにちなんで名付けられたこの岩石こそが、ドロミーティを唯一無二の存在たらしめている要因である。

朝日に照らされて燃えるようなバラ色に染まる現象、「エンロサディーラ(Enrosadira)」は、まるで天空の画家が情熱を込めてキャンバスに色を叩きつけたかのような光景だ。この美しい瞬間を目撃すれば、訪れる者は誰もが言葉を失い、ただその場に立ち尽くすしかないだろう。2009年には、その独自の景観美と地質学的価値が認められ、ユネスコの世界自然遺産に登録された。この場所はまさに、地球の歴史が刻まれた巨大な美術館といえる。

また、この地域は文化の交差点としても知られている。イタリア語だけでなく、ドイツ語やラディン語が飛び交うこの地は、第一次世界大戦の激戦地としての歴史を持つ。現在ではハイキングコースとなっている道がかつては兵士たちが往来した軍用道路であったり、岩壁には当時の塹壕の跡が残されていたりするのだ。美しい自然の背後には、人々の祈りや悲しみが深く刻み込まれている。その複雑で重層的な歴史の調和こそが、ドロミーティの奥深い魅力を形作っているのだ。

四季が奏でるドロミーティのシンフォニー

ドロミーティの旅を計画する上で最も重要なのは、訪れる季節を選ぶことだ。季節ごとに、この壮大な自然のオーケストラはまったく異なるメロディーを奏でる。あなたが耳を傾けたいのは、生命力あふれる夏のフォルティッシモか、それとも静寂に包まれた冬のピアニッシモか。各季節の旋律をじっくり味わってみよう。

夏(6月下旬〜9月上旬):緑のフォルティッシモ

ドロミーティが最も生き生きと輝き、その魅力を存分に放つのが夏だ。厳しい冬が終わり、雪解け水が大地を潤し、草原が一斉に緑の絨毯のように広がる。その上に、彩り豊かな高山植物が音符のように咲き誇る。ゲンティアナの鮮やかな青、アルペンローゼの柔らかなピンク、そして伝説の花エーデルワイスの純白。まさに、生命の喜びを力強く歌い上げるフォルティッシモ(極めて強く)だ。

  • 気候と気温

谷間の日中の気温は20〜25℃ほどで快適、半袖で過ごせる日も多い。しかし標高3,000m級の山々が連なる場所だけに、天候は非常に変わりやすい。晴れていても数時間後に雷雨に見舞われることも珍しくない。標高が100m上がるごとに約0.6℃気温が下がると言われており、リフトで2,500mまで一気に昇ると10℃以下になることもある。紫外線は日本の数倍にもなるため、日焼け対策は欠かせない。

  • 楽しみ方

夏のドロミーティはアウトドアアクティビティの楽園だ。ハイキング、トレッキング、マウンテンバイク、クライミング、ヴィア・フェラータ(岩壁に設置されたワイヤーを使って登るアクティビティ)など、多彩な楽しみ方がある。初心者も安心な緩やかな散策路から、経験者向けの険しい縦走路まで豊富なコースが揃う。麓の村を結ぶリフトやゴンドラもフル稼働しており、体力に自信がなくても絶景ポイントに気軽にアクセスできるのが魅力だ。

  • 服装と持ち物

夏のドロミーティで最も肝心なのは「レイヤリング(重ね着)」の考え方だ。

  • ベースレイヤー: 速乾性のあるTシャツやアンダーウェア。汗をかいてもすぐ乾き、コットンのように湿ったままで体を冷やす素材は避ける。
  • ミドルレイヤー: 保温を担うフリースや薄手のダウンジャケット。休憩時や悪天候時にさっと羽織れるもの。
  • アウターレイヤー: 防水・防風に優れたレインウェアやシェルジャケット。突然の雨や風から身を守る生命線であり、上下セパレートタイプが動きやすい。
  • ボトムス: 伸縮性のあるトレッキングパンツが基本。ジーンズは濡れると重くなり動きづらいため避けたい。
  • 足元: 最重要装備。防水性のあるハイカットトレッキングシューズが最適で、足首を守り悪路でも安定した歩行を助ける。必ず事前に履き慣らしておくこと。
  • その他: 紫外線対策用の帽子、サングラス、日焼け止めは必須。また、水分補給のための水筒(最低1.5リットル)、ナッツやエナジーバーなどの行動食、地図、コンパスやGPSアプリ、ヘッドランプ、救急セットもバックパックに忘れずに。
  • 読者ができること:夏の計画

夏は観光客が世界中から訪れるピークシーズン。特に7月下旬から8月は混雑が激しく、人気の山小屋(リフージョ)やホテルは数ヶ月前に予約が埋まることも多い。計画は早めに立てよう。 ハイキングコースやリフトの運行状況は公式サイトで事前確認するのが確実。例えばヴァル・ガルデーナ周辺なら「Dolomiti Supersummer」のサイトが非常に便利で、リフトの運行期間や料金、ハイキングマップが網羅されている。

  • 公式サイトへの案内: 夏のリフトやハイキング情報は、Dolomiti Supersummer公式サイトをチェックしよう。インタラクティブマップで自分のレベルに合ったコースも探せる。

秋(9月中旬〜11月上旬):黄金色のメランコリー

夏の賑わいが静まり返り、ドロミーティが物憂げで美しい表情を見せるのが秋だ。この時期の主役は「ラルーガ(Lärche)」、つまりカラマツの紅葉だ。ドロミーティの針葉樹林の大部分を占めるカラマツが一斉に黄金色に染まり、青空と白い岩肌との鮮やかなコントラストは、まるで印象派の絵画のようだ。澄んだ空気によって山々の輪郭がよりくっきりと浮かび上がるのも特徴的。観光客が減り静かな山歩きを楽しみたい人にとっては、最高のシーズンだろう。

  • 気候と気温

9月は比較的安定しているが、10月に入ると気温は急激に下がり、朝晩は氷点下の日も出てくる。谷間でもセーターやフリースが手放せなくなる。10月下旬には標高の高い場所で初雪が降ることも多く、冬の訪れを感じさせる。夏以上に天候が変わりやすいため、常に最新の天気予報をチェックすることが重要だ。

  • 楽しみ方

秋のドロミーティは紅葉ハイキングが醍醐味。特にフネス谷やアルペ・ディ・シウジ、ファルツァーレゴ峠周辺は、黄金色に染まるカラマツ林が広がる絶景スポットとして有名だ。夏の喧騒から離れ、静けさの中で自分自身と向き合う時間を持てる。ただし、9月下旬からはリフトの運行が徐々に終了し、山小屋も閉まるところが増えるため注意が必要だ。

  • 服装と持ち物

基本は夏同様のレイヤリングだが、より保温を重視した装備が求められる。

  • ミドルレイヤー: 夏より厚手のフリースやライトダウンが活躍。
  • アウターレイヤー: 防水・防風は必須で、雪の可能性も考慮し保温性があると安心。
  • その他: ニット帽、手袋、ネックウォーマーなどの防寒小物は欠かせない。寒い中で飲む温かい飲み物のため、保温性の高い魔法瓶(サーモス)も持参したい。足元は夏同様防水トレッキングシューズだが、雪を考慮して厚手の靴下を用意すると安心だ。
  • 読者ができること:秋の計画

秋の旅ではリフトや山小屋の営業期間を必ず確認しよう。目的地の観光局ウェブサイトをブックマークし、出発前に最新情報をチェックするのが望ましい。南チロル地域の観光情報サイトでは、紅葉の見頃が更新されている場合もある。また、この季節は日没が早いため、ハイキングは早朝に出かけ、夕方までに下山できる余裕を持った計画を心掛けてほしい。万が一に備え、ヘッドランプを携帯するのもおすすめだ。

冬(12月〜3月):白銀のピアニッシモ

ドロミーティが雪に全ての音を包まれ、静寂と荘厳さに満ちた世界へと姿を変えるのが冬。白と青のモノクロームの景色に支配され、聞こえるのは自身の呼吸と雪を踏む音だけ。まさに息を呑むようなピアニッシモ(極めて弱く)である。しかしその静けさの中には、熱狂的なエネルギーも宿る。ここは、ヨーロッパ最大級のスキーリゾート「ドロミテ・スーパースキー」の舞台なのだ。

  • 気候と気温

冬のドロミーティは言うまでもなく極寒。谷間の村でも日中の気温が氷点下は当たり前で、夜間は-10℃以下に冷え込むこともしばしば。標高の高いスキー場では-20℃近くに達することもあり、十分な防寒対策が欠かせない。ただし湿度が低いため、日本の冬のように体の芯まで凍える寒さとは異なり、晴れた日は太陽の光が暖かく感じられるが、油断は禁物だ。

  • 楽しみ方

冬の主役はウィンタースポーツだ。12のスキーエリア、総延長1,200km以上のゲレンデを1枚のスキーパスで滑り放題という「ドロミテ・スーパースキー」は、世界中のスキーヤーやスノーボーダーにとって憧れの場所。特に有名な「セラロンダ」はセッラ山群を一周する約40kmのスキーサーキットで、リフトを乗り継ぎながら一日がかりで壮大なツアーが楽しめる。スキー以外にも、スノーシューで雪の森を歩くスノーシューハイキングやクロスカントリースキーも人気が高い。

  • 服装と持ち物

雪山仕様の本格的な装備が求められる。

  • ウェア: 防水性・透湿性・保温性に優れたスキーウェアやスノーボードウェアは必須。
  • インナー: 保温力のある化学繊維やウール製のアンダーウェア。ヒートテックのような発熱素材も効果的。フリースなどを重ね着すると保温性が高まる。
  • 小物: 厚手の手袋(ミトンタイプは特に暖かい)、耳まですっぽり覆うニット帽、ネックウォーマーやバラクラバ(目出し帽)は絶対に必要。
  • その他: 雪面からの強い照り返しを防ぐゴーグルやサングラス、乾燥対策のリップクリームやハンドクリームも忘れずに。街歩き用には防水性・滑りにくい靴底を備えたスノーブーツが便利だ。
  • 読者ができること:冬の計画

「ドロミテ・スーパースキー」を満喫するには、まずスキーパスの購入が必要。1日券からシーズン券まで多様な種類があり、事前にオンライン購入するとリフト券売り場での待ち時間を避けられるのでおすすめだ。

  • 具体的手順:
  1. ドロミテ・スーパースキー公式サイトの料金ページで滞在日数に合うパスを選ぶ。
  2. オンラインショップにて必要情報を入力し、クレジットカードで購入。
  3. バウチャーを印刷、またはスマホに保存。
  4. 現地到着後、指定リフト券売り場やピックアップボックスでバウチャーを提示またはQRコードをスキャンし、スキーパスを受け取る。

村ごとにレンタルショップが充実しているので、重いスキー装備は現地で借りるのが賢明だ。

春(4月〜5月):雪解けのクレッシェンド

冬の静けさが解け、小川となった雪解け水が流れ出し、再び大地が目覚める季節が春。鳥のさえずりが戻り、谷間の草原にはクロッカスやプリムラなど春の花々が顔をのぞかせる。冬から夏へ向かう期待に満ちたクレッシェンド(だんだん強く)の季節だ。ただし、この時期は旅人にとってやや難しい季節であることも覚えておきたい。

  • 気候と気温

天候が最も不安定な時期で、谷間で暖かな日もあれば山では吹雪になることもある。雪解けにより地面はぬかるみやすく、ハイキングコースの状態が良くないことも多い。標高の高い場所では雪崩のリスクも高まる。

  • 楽しみ方

多くのリフトはメンテナンスのため運休し、山小屋も閉まっていることがほとんど。山歩きにはまだ早いが、麓の村をゆったり散策したり、残雪の山々を眺めながらドライブを楽しんだり、比較的標高の低い谷間の散歩道を歩いたりするのがおすすめだ。観光客が最も少ない季節なので、静かなドロミーティの日常風景を味わえる貴重な時間でもある。

  • 服装と持ち物

最も難しい服装選びの季節。冬用の防寒具と夏の装備の両方を用意する必要がある。

  • 足元: 雪解け水でぬかるむ道を歩くため、防水性の高いトレッキングシューズが必須。
  • レイヤリング: 気温変化に柔軟に対応できるよう、脱ぎ着しやすい服装を心掛ける。防水アウターは必ず持参し、フリースや薄手のダウンもあると安心。
  • その他: 晴れた日の紫外線は強いので、サングラスや日焼け止めも忘れずに。
  • 読者ができること:春の計画

春に訪れる場合は、活発に山を歩き回るより、ゆったりとした過ごし方を想定したほうが良い。リフトや道路の状況は、出発前に必ず現地観光局のウェブサイトで最新情報を確認しよう。雪崩などの危険情報も発信されるため、安全第一を心掛けたい。春の旅は予測不能な変化も楽しむくらいの気持ちの余裕があると良いだろう。

ドロミーティの旅を彩るギアとウェア

ドロミーティの雄大な風景を満喫するには、それに見合った準備が欠かせない。特に服装や装備は、旅の快適さと安全性に直結する重要なポイントだ。ここでは、季節を問わず共通する基本的な考え方と具体的な持ち物リストを詳しく解説しよう。

基本の三要素:レイヤリング、防水・防風、UV対策

これら三つは、ドロミーティでの服装選びにおける絶対的な指針と言える。

  • レイヤリング(重ね着)

複数の薄手の衣服を組み合わせて着ることで、気温や運動量の変化に対応する技術だ。

  • ベースレイヤー(肌着): 肌に触れる最初の層。汗を素早く吸収し外へ放出する「吸湿速乾機能」が最重要。化学繊維のポリエステルや、保温性に優れたメリノウールが理想的だ。汗で濡れたコットンは体温を奪い低体温症の危険が高まるため避けるべき。
  • ミドルレイヤー(中間着): 保温を担う層で、フリースやダウン、合成繊維のインサレーションが該当。空気を多く含み体温を閉じ込める役割を果たす。行動時には脱ぎ、休憩時に着るなど小まめな調節が必要だ。
  • アウターレイヤー(外着): 雨風や雪から体を守る防御壁。ゴアテックスなどの防水透湿素材が理想で、外の水を遮断しながら内側の蒸気は逃がし、快適な環境を維持する。
  • 防水・防風

山の天候は変わりやすい。晴れていたのに突然冷たい風や激しい雨に見舞われることも少なくない。風速1m/sごとに体感温度は約1℃下がると言われ、風を防ぐことだけでも体力の消耗を大幅に抑えられる。体が濡れることは低体温症のリスクを高めるため、信頼できる防水・防風ウエアはドロミーティでの命綱といっても過言ではない。

  • UV対策

高地は空気が薄く紫外線が強烈だ。標高が1,000メートル上がるごとに紫外線量は10%以上増加すると言われ、曇天でも紫外線は雲を貫通して降り注ぐ。つばの広い帽子、UVカット効果のあるサングラス、SPF50+・PA++++推奨の日焼け止めは年間を通じて必携だ。特に雪上では地面からの反射も強く、サングラスを着用しないと雪目(紫外線による角膜炎)になる危険がある。

夏季ハイキングの装備チェックリスト

夏にドロミーティを歩く際は、以下のリストを参考にパッキングをしよう。

  • 必携アイテム
  • バックパック: 日帰りなら容量20〜30リットルが目安。体にフィットし、ウエストベルトとチェストストラップが備わったものが望ましい。
  • トレッキングシューズ: 防水機能があり、足首を覆うハイカットタイプがベスト。
  • レインウェア(上下): 防水透湿素材製のものを用意。
  • 地図とコンパス: スマートフォンのGPSも便利だが、電池切れや故障に備えてアナログ装備も持参しよう。
  • 水筒・ウォーターボトル: 最低でも1.5リットルは携行。夏は水分補給が生命線だ。
  • 行動食・非常食: ナッツ、ドライフルーツ、エナジーバーなど、簡単にカロリーが摂れるものがおすすめ。
  • ヘッドランプ: 日帰りでも道に迷ったり怪我で行動が遅れる可能性を考慮し、必ず携帯。予備の電池も忘れずに。
  • 救急セット: 絆創膏、消毒液、痛み止め、常用薬、蜂刺され用のポイズンリムーバーもあると安心。
  • スマートフォン: 緊急連絡用に必携、モバイルバッテリーも忘れずに準備しよう。
  • 身分証明書・保険証: コピーでもよいので携帯すること。
  • 推奨アイテム
  • トレッキングポール: 登りでは推進力を補助し、下りでは膝への負担を減らす。2本あるとバランスが取りやすい。
  • 速乾性タオル: 汗拭きや緊急時に便利。
  • ゴミ袋: 自分のゴミは必ず持ち帰るのが最低限のマナー。
  • 日焼け止め、サングラス、帽子: ほぼ必須アイテムと考えてよい。
  • ウェットティッシュ: さまざまな場面で役立つ。
  • 熊鈴: ドロミーティには熊の目撃例は少ないが、野生動物の不意な遭遇を避ける効果があり心強い。

足元が紡ぐ旅のメロディ:シューズ選びのポイント

いかに高価なウエアを揃えても、自分の足に合ったシューズを履いていなければ、快適な旅は望めない。ドロミーティの道は、整備された砂利道から岩場、ぬかるんだ土道まで多種多様だ。

  • トレッキングシューズ(ブーツ): 足首を包み込むハイカットまたはミッドカットが基本。捻挫の予防や防水性の確保、頑丈なソールで不整地でも安定した歩行を約束する。ヴィア・フェラータなどの岩場に挑むなら、つま先がクライミングシューズのように補強されたアプローチシューズも検討しよう。
  • 靴ずれ対策: 新品の靴でいきなり長距離を歩くのは危険だ。購入後は近場や低山で十分に履き慣らすこと。自分の足に合う厚手のトレッキングソックスを使うのも効果的だ。さらに、靴ずれ防止用パッドやテープを救急セットに入れておくと安心だ。

ドロミーティへのプレリュード:旅の準備とプランニング

壮大な音楽を聴きに行く前には、チケットを購入し、会場までの行き方を調べ、座る席を決めておく必要がある。同様に、ドロミーティへの旅でも事前準備が不可欠だ。ここでは、具体的なアクセス方法や滞在のポイントについて詳しく紹介する。

空路と陸路:ドロミーティへのアクセス方法

ドロミーティには「ドロミーティ空港」という空港は存在しない。複数の周辺空港から陸路で向かうのが一般的だ。

  • 主要な国際空港
  • ヴェネツィア・マルコポーロ空港(VCE): ドロミーティ東部(例:コルティナ・ダンペッツォ)へのアクセスに最適。
  • ミラノ・マルペンサ空港(MXP)/リナーテ空港(LIN): ドロミーティ西部(ヴァル・ガルデーナなど)への玄関口。距離はあるが、日本からの直行便が充実している。
  • インスブルック空港(INN / オーストリア): ドロミーティの北側への入口となる空港。
  • ヴェローナ空港(VRN): アクセスしやすいもう一つの選択肢。
  • 空港からの移動手段
  • レンタカー: 最も自由度が高くおすすめの方法。公共交通機関では行きづらい絶景スポットや峠道にも気軽に足を運べる。国際免許証の携帯は必須。イタリアの山岳道路は狭く曲がりくねっているため、運転には十分注意が必要。また、冬場はスノータイヤやチェーン携行も欠かせない。
  • 公共交通機関(バス・鉄道): 環境面で優しく経済的。主要空港からは、高速バス(FlixbusやCortina Expressなど)や鉄道とバスの組み合わせでドロミーティの麓の町まで移動できる。
  • 鉄道: イタリア国鉄トレニタリア(Trenitalia)で、ヴェネツィアからカラルツォ・ディ・カドーレへ、またはヴェローナ経由でボルツァーノやブレッサノーネへ向かい、そこからバスに乗り換えるルートが一般的。
  • バス: ドロミーティ周辺は路線バス網が充実している。特に南チロル(アルト・アディジェ)では「Südtirol Mobil」という交通ネットワークが発達しており、乗り放題パスを利用すれば効率よく移動が可能。
  • 公共交通利用の流れ
  1. 目的地に最寄りの鉄道駅を調べる(例:ヴァル・ガルデーナならボルツァーノ駅)。
  2. トレニタリアの公式サイトで出発空港近くの駅から目的地最寄駅までの列車チケットを予約。
  3. バスの公式サイト(例:Südtirol Mobil)で、鉄道駅から目的地までのバス時刻と路線を確認。バスのチケットは多くの場合、乗車時に運転手から購入可能。

山小屋(リフージョ)とホテル:天空の宿泊体験

ドロミーティ滞在は、麓の町にあるホテルやB&Bを利用する場合と、山の中腹や尾根にある山小屋「リフージョ(Rifugio)」に宿泊する方法がある。

  • リフージョの魅力

リフージョでの宿泊は、ドロミーティ旅行の大きな醍醐味のひとつ。夕日に染まるエンロサディーラを眺め、満天の星空の下で眠り、朝日に目を覚ますという贅沢な体験を味わえる。多くのリフージョでは温かい食事やワインも提供され、質素ながらも温もりのある空間で世界中から集まったハイカーたちとの交流も楽しめる。

  • リフージョ利用のルールとマナー

山小屋はホテルとは異なり、共用スペースや共同生活であることを心得ておく必要がある。

  • 予約必須: 特に夏の繁忙期は人気のリフージョは数ヶ月前に予約しないと宿泊が難しい。公式サイトや電話での予約を忘れずに。
  • インナーシーツ持参: 衛生面の理由から、多くのリフージョではインナーシーツ(スリーピングバッグライナー)の持参が義務付けられている。忘れた場合は現地で購入可能。
  • 室内履き: 登山靴のまま室内に入ることは禁止されており、入口でスリッパに履き替える必要がある。
  • 消灯時間: 消灯は原則22時頃。ほかの宿泊者の迷惑にならないよう静かに過ごす。
  • 節水: 山の上では水が貴重。シャワーは有料または時間制限がある場合が多いため配慮を。
  • リフージョの探し方

イタリア山岳会(CAI)のサイトや地域観光局の公式サイトで情報を集められる。また、Googleマップで「Rifugio」を検索して口コミや写真を参考にするのも便利。予約はメール、公式フォーム、電話で手続きが可能。簡単な英語でも対応してくれる場合が多い。

トラブルへの備え:旅の不協和音を避けるために

旅ではトラブルが起こることもあるが、事前の準備と知識でトラブルを最小限に抑えられる。

  • 天候の急変: 山の天気予報は必ずしも正確ではない。常に最悪のケースを想定し、レインウェアや防寒着を携帯しよう。雷音が聞こえたら即座に稜線や山頂から離れ、窪地など安全な場所へ避難。無理をせず、引き返す勇気がもっとも重要。
  • 怪我や病気: 捻挫や転倒時は応急処置を施し、自力で下山できない場合は躊躇なく救助を要請すること。ヨーロッパの緊急通報番号は「112」。電話で警察・消防・救急に繋がる。所在地を正確に伝えられるよう、地図やGPSで現在地を確認しておくことが大切。
  • 海外旅行保険: 必ず加入したい。山岳救助はヘリコプター出動になることも多く、費用は数百万円に達する場合もある。保険加入で治療費や救援費がカバーされる。クレジットカード付帯の保険は、ハイキングなどリスクのある活動が対象外になっているケースもあるため契約内容をよく確認しよう。
  • 交通機関のトラブル: バスの遅延や運休はよくあること。常に代替プランを用意しておく(タクシーや別の路線バスなど)。事前に代替手段を調べておくと慌てずに済む。
  • 緊急時に使えるイタリア語フレーズ
  • 助けて!: Aiuto!(アユート!)
  • 救急車!: Ambulanza!(アンブランツァ!)
  • 警察!: Polizia!(ポリツィア!)
  • 気分が悪いです: Mi sento male(ミ セント マーレ)
  • 道に迷いました: Mi sono perso/persa(ミ ソノ ペルソ/ペルサ)(男性/女性)

自然への敬意:ドロミーティを持続可能にするために

僕たちはこの壮大な舞台の観客であり招かれたゲストである。この美しい音楽を未来永劫にわたって奏で続けるためには、自然への最大限の敬意と配慮が必要不可欠だ。ドロミーティはユネスコの世界遺産であり、全人類にとってかけがえのない宝物なのだ。

  • Leave No Trace(痕跡を残さない)

これはアウトドア活動における世界共通の行動規範である。

  • トレイルは決められた道を歩くこと: 指定されたルートを外れて歩くと、繊細な高山植物が損なわれる。ショートカットは絶対に避けよう。
  • ゴミは必ず持ち帰る: 食品のくずや果物の皮を含め、持ち込んだすべてのものを持ち帰るのは当然のマナーだ。
  • 野生動物に餌を与えない: 人間の食べ物は彼らにとって害となり、生態系のバランスを崩してしまう。
  • 高山植物は摘まずに写真で記録するだけ: その美しさを心に留め、その場に残しておこう。
  • 焚き火は許可された場所でのみ: 山火事の危険を避けるため、焚き火が許される場所はごく限られている。
  • ドローン飛行のルール

空からの絶景撮影の気持ちは理解できるが、ドロミーティの多くの地域は国立公園や自然保護区に指定されており、ドローンの飛行は厳しく規制されているか全面的に禁止されている。無断で飛ばすと高額な罰金を科される場合があるため、事前に地域の規則を確認し、必要な許可を必ず取得しよう。これは自然の静けさと動物たちの生活を守るための重要なルールである。

僕たちがドロミーティから受け取る感動は計り知れない。その感動に応えるために、訪れる前よりも美しい状態でこの地を後にすること。少なくともそれくらいの心構えで、この偉大な自然と向き合いたい。

ドロミーティの旅は、ただの絶景めぐりではない。それは地球の鼓動を感じ、自分の内側の声に耳を澄ませる旅だ。風のささやき、岩肌の色彩、星々の輝きの中で、君だけのメロディを見つけてほしい。さあ、準備はできたか?君の魂を揺り動かすシンフォニーを聴きに行こう。

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