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天空の城塞、ドロミーティへ。日本からのアクセス完全ガイド&現地交通の極意

切り立った岩肌が、夕陽を浴びて薔薇色に染まる。雲海の下には、おとぎ話に出てくるような緑の谷間と静かな湖が広がる。イタリア北東部に横たわるドロミーティ山塊は、その圧倒的な美しさで訪れる者を魅了し、2009年にはユネスコ世界自然遺産にも登録されました。しかし、その魅力は単なる絶景だけに留まりません。第一次世界大戦の激戦地であったこの地には、今もなお塹壕や要塞の跡が静かに眠り、歴史の記憶を留めています。風にそよぐ高山植物の隣で、朽ち果てた軍事施設が佇む風景。その退廃的な美しさに、私は心を奪われずにはいられないのです。

こんにちは、ライターの真理です。大学時代から廃墟の魅力に取り憑かれ、世界中の朽ちた建築をライカとキャノンを相棒に記録し続けています。今回は、多くの旅人が憧れるドロミーティへのアクセス方法を、日本からのアプローチから現地の隅々を巡る交通手段まで、私の経験を交えながら徹底的に解説していきたいと思います。この記事を読み終える頃には、あなたもきっと、ドロミーティへの旅の具体的な計画を立て始めているはず。さあ、天空の城塞への扉を開きましょう。

目次

日本からドロミーティへの玄関口へ – 最寄り空港はどこ?

日本からドロミーティへ向かう場合、通常はまずヨーロッパの主要都市へ飛び、そこから陸路でアクセスするスタイルが一般的です。残念ながら、ドロミーティの中心部には国際空港がありませんが、周辺には旅行の拠点となる便利な空港がいくつか存在します。どの空港を利用するかによって、旅程や費用、所要時間が大きく異なるため、それぞれの特徴を比較したうえで選ぶことが大切です。

ヴェネツィア・マルコ・ポーロ空港(VCE) – 最も利用者が多い空港

ドロミーティ東側の入り口として最も多くの旅行者が利用するのが、水の都ヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港です。特に、ドロミーティ観光の中心地であるコルティナ・ダンペッツォへのアクセスに優れています。

日本からの直行便はありませんが、フランクフルト、パリ、ヘルシンキなどのヨーロッパ主要都市や、中東のドバイ、イスタンブールを経由する便が多数運航しており、選択肢は豊富です。航空券を検索する際は、スカイスキャナーやGoogleフライトなどの比較サイトを利用し、乗り継ぎ時間と料金のバランスを重視して選ぶのが賢明でしょう。出発の3ヶ月から半年前にチェックを始めると、比較的リーズナブルなチケットが見つかりやすい傾向にあります。

ヴェネツィア空港からコルティナ・ダンペッツォへは、直通シャトルバス「Cortina Express」が約2時間で運行しています。事前にオンラインで予約することを強く推奨します。特に夏のハイシーズンは満席になることも珍しくありません。バスの車窓から、平野が徐々に山岳地帯へと変わっていく景色を眺める時間は、これから始まる旅への期待感を高めてくれる良い前奏となるでしょう。

ミラノ・マルペンサ空港(MXP) – 大都市を経由するメリット

ファッションと芸術の都ミラノも、ドロミーティへの有力なゲートとして知られています。特にドロミーティ西部のボルツァーノやヴァル・ガルデーナ方面を目指す場合に便利です。

マルペンサ空港はイタリア最大級の国際空港で、日本からのフライト数はヴェネツィアより多く、価格競争も起こりやすいのが魅力です。旅の前後にミラノでショッピングや観光を楽しみたい方にとっては理想的なルートと言えるでしょう。

ミラノからドロミーティへは少し長旅となります。まず空港からミラノ中央駅に移動し、そこからイタリア国鉄(Trenitalia)でヴェローナを経由してボルツァーノ(Bolzano/Bozen)へ向かうのが一般的で、所要時間は約3〜4時間です。ボルツァーノ駅からは各方面へのローカルバスが頻繁に出ており、乗り換えもスムーズに行えます。

また、ミラノからFlixBusなどの長距離バスを利用してボルツァーノやトレントに向かう方法もあります。時間はかかりますが、鉄道よりも料金が安い場合が多いため、費用を抑えたい旅行者には嬉しい選択肢となっています。

インスブルック空港(INN) – オーストリア経由のアクセス

あまり知られていませんが、オーストリア・チロル地方の中心都市インスブルックの空港も、特にドロミーティ北部へのアクセスに非常に便利です。アルプスに囲まれた美しい空港で、到着時の眺めは圧巻です。

フランクフルトやウィーンからの乗り継ぎ便が主流で、日本からの直行便は少ないものの、オーストリアのチロル地方とドロミーティを組み合わせた周遊旅行を計画している場合は最適な選択肢となります。国境を越えるドライブはヨーロッパ周遊の魅力を存分に味わえるでしょう。

インスブルックからボルツァーノまでは鉄道またはバスで約2時間です。高速道路のブレンナー峠を通る際の車窓からの景色も素晴らしく、短時間でイタリア領内に入ります。国境の標識を目にした瞬間の高揚感は今でも鮮明に覚えています。

航空券予約の具体的なステップと注意事項

航空券の予約は旅の準備における重要な第一歩です。ここで具体的な手順とポイントをお伝えします。

まず、前述の比較サイトで希望の出発日と目的地(ヴェネツィア、ミラノなど)を入力し検索します。表示された結果から価格、乗り継ぎ時間、航空会社を総合的に考慮して選びましょう。特にLCC(格安航空会社)を利用する際は注意が必要です。見た目の料金は安くても、預け荷物や座席指定が有料であることが多いため、最終的な合計金額で比較することが重要です。

予約を進めると、パスポート情報(氏名、番号、有効期限)の入力が求められます。一文字でも誤ると搭乗できないリスクがあるため、慎重に何度も確認しながら入力してください。支払いは基本的にクレジットカードで行います。決済完了後、Eチケットがメールで届くので、印刷するかスマートフォンに保存しておくと安心です。

燃油サーチャージや空港税は航空券代金に含まれる場合と別途請求される場合があるため、最終的な支払い額を予約確定前に必ず確認しましょう。また、キャンセルや日程変更に備えて、航空会社の規定や予約サイトのキャンセルポリシーをあらかじめよく読んでおくことを推奨します。さらに、航空機遅延や欠航をカバーする海外旅行保険に加入しておくと、安心感が増します。

空港からドロミーティの心臓部へ – 地上交通を制する

目的の空港に到着したら、いよいよドロミーティの山々へ向かいます。ここからの移動手段は、旅のスタイルや予算、そして「何をしたいか」によって大きく異なります。それぞれのメリットとデメリットを理解し、あなたに最適な方法を選びましょう。

自由を求める旅人へ – レンタカーの魅力

私自身、ドロミーティを訪れる際にはほとんどの場合レンタカーを利用します。理由はその自由度の高さにあります。公共交通機関の時間に縛られず、気になった景色の前で自由に車を停めてじっくり撮影したり、地図で見つけた人里離れた教会や第一次大戦の廃墟となった砦跡まで思うままにアクセスできるからです。特にハイキングの起点となる登山口や名高い峠の展望台は、バスでは訪れにくい場所が多く、レンタカーの利便性は大いに魅力的です。

しかしメリットばかりではありません。費用面では公共交通機関よりも割高になることが多く、慣れない右側通行やイタリア独特の交通ルール、加えてドロミーティの険しい峠道を運転するには一定の技術と覚悟が求められます。

レンタカー予約から返却までのポイント

レンタカーを選択する場合は、以下の手順と注意点を押さえておくと安心です。

  • 予約: 日本にいる間にRentalcars.comなどの比較サイトで予約を済ませるのが基本です。空港カウンターでの直接レンタルも可能ですが、割高になるケースが多く、希望車種がないこともあります。オートマチック車(AT)を希望する場合は必ず指定しましょう。ヨーロッパではマニュアル車(MT)が主流で、指定しなければMT車が提供されることがほとんどです。
  • 必要書類:
  • パスポート: 必須書類です。
  • 日本の運転免許証: 有効期限内のものを用意してください。
  • 国際運転免許証: 運転免許センターや警察署で取得可能で、有効期間は発行から1年間です。日本の免許証とセットで携帯しましょう。
  • クレジットカード: デポジットとして提示を求められます。運転者本人名義で、利用可能枠が十分なカードを持参してください。デビットカードは多くの場合利用不可ですので注意が必要です。
  • 保険について: 予約時に保険の選択が可能です。基本的な保険料は料金に含まれていますが、多くの場合免責額(事故時に自己負担する金額)が設定されています。私は免責額がなくなる「フルカバー保険」や「追加補償」の加入を推奨しています。慣れない土地での運転は予期せぬトラブルが起こりやすいため、「保険は旅の安心料」と割り切って加入しましょう。
  • イタリアの交通ルール:
  • ZTL(Zona a Traffico Limitato): 多くのイタリアの都市中心部には、許可車両以外が進入禁止の「ZTL」エリアがあります。知らずに侵入すると後日、高額な罰金が日本の住所に郵送されます。標識の見落としに注意し、街中の運転は細心の注意を払ってください。Google MapsやWazeなどのナビアプリはZTLを避けたルート案内をすることが多いですが、最終的には自分で標識を確認することが重要です。
  • アウトストラーダ(高速道路): イタリアの高速道路は有料で、入口でチケットを取り出口で料金を支払います。支払いは現金、クレジットカード、または「Telepass」というETC専用レーンがあります。レンタカーには通常Telepassが付帯していないため、「Carte」と書かれたカード支払いレーンか現金払いのレーンを利用しましょう。
  • 駐車: 観光地では駐車場が不足しがちです。路上駐車の白線は無料、青線は有料で近くの券売機でチケットを購入しダッシュボードに掲示します。黄線は許可車両専用です。ルール違反をすると罰金が課せられます。
  • 山岳ドライブの心得: ドロミーティの道路は、連続するつづら折りの峠道(パッソ)で構成されます。幅が狭く対向車も多いため、カーブミラーをよく確認し控えめな速度で走行してください。特に雨や霧の日は視界が悪くなるため、一層注意が必要です。冬期の運転時は、冬用タイヤまたはチェーンの装着が法律で義務付けられている区間があるので、予約時に必ず確認してください。

移動の効率とコストを考えるなら – 長距離バス(FlixBusなど)

運転を避けたいが、できるだけ安く乗り換えなしで移動したい方には長距離バスがおすすめです。ヨーロッパ全域に路線を持つFlixBusや、前述のCortina Expressなどが主要な選択肢となります。

ヴェネツィア空港からコルティナ・ダンペッツォやボルツァーノへ、またミラノからボルツァーノやトレントへといった主要都市間の路線が充実しています。チケットは公式サイトや専用アプリで簡単に予約・購入でき、スマホのQRコードを提示するだけで乗車可能です。価格は鉄道よりも安めで、早期予約による割引もある場合があります。

車内にはWi-Fiや電源コンセントが備えられているバスも多く、快適な移動が可能です。大型スーツケースも預けられるため、荷物が多い方にも便利です。ただし便数には限りがあるため、飛行機の到着時間との連携をよく確認し、交通渋滞による遅延の可能性も念頭に置いておきましょう。

快適かつ正確な移動なら – 鉄道とローカルバスの組み合わせ

時間の正確さや快適さを重視したい場合は、鉄道とローカルバスを上手に組み合わせるのが最適です。ドロミーティ山系内には鉄道は通っていませんが、その周辺の主要都市まではイタリア国鉄(Trenitalia)が運行しています。

  • 東側エリア(コルティナ方面)へ: ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅からカラルツォ・ディ・カドーレ(Calalzo di Cadore)駅まで鉄道で移動し、そこからDolomiti Busに乗り換えてコルティナ・ダンペッツォへ向かいます。ヴェネツィアからコルティナ直通のバスもありますが、このルートはややマニアックで、鉄道旅を楽しみたい方におすすめです。
  • 西側エリア(ヴァル・ガルデーナ、ボルツァーノ方面)へ: ミラノ中央駅やヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅から高速列車フレッチャロッサ(Frecciarossa)などでボルツァーノ(Bolzano/Bozen)駅まで向かいます。ボルツァーノはドロミーティ西部の交通拠点で、駅前のバスターミナルからオルティゼーイ(Ortisei)、サンタ・クリスティーナ(S. Cristina)などヴァル・ガルデーナ地域の各リゾートへ向かうSAD社のバスが頻繁に発着しています。

イタリア国鉄のチケットは、[公式サイト](https://www.trenitalia.com/en.html)や「Trenitalia」アプリで事前購入が可能です。早めに予約すると「Super Economy」などの割安チケットが手に入ります。駅の窓口や券売機でも購入できますが、ハイシーズンは混雑しやすいため、事前購入をおすすめします。購入済みの紙のチケットは乗車前に駅の刻印機(Convalida)で必ず打刻してください。打刻がないと車内検札で高額な罰金を科されることがあります。一方、オンライン購入しQRコード付きのチケットは打刻不要です。

ドロミーティ山塊を巡る – 現地での移動手段

無事にドロミーティの拠点となる街に到着しました。ここからは、いよいよ山岳地帯の内部を探検する冒険が始まります。数えきれないほどのハイキングコースや絶景の峠、美しい湖へは、どのようにアクセスすればよいのでしょうか。

ドロミーティ・スーパーサマーカード – 魔法のパスを最大限に活用する

夏のドロミーティをアクティブに満喫したいなら、ぜひ手に入れたいのが「ドロミーティ・スーパーサマーカード」です。このカードは、ドロミーティ全域に点在する約100基のリフト、ゴンドラ、ロープウェイが乗り放題となる、まさに魔法のようなパス。また一部エリアの公共バスも無料で利用可能なため、コストパフォーマンスは非常に優れています。

  • カードの種類と料金: 1日券からシーズン券まで多彩に用意されていますが、旅行者には「3日間券」「5日間券」「7日間券」などが人気です。料金は年度ごとに変動するため、[ドロミーティ・スーパーサマー公式サイト](https://www.dolomitisuperski.com/en/SuperSummer/Prices-and-benefits/Prices)で最新情報をチェックしましょう。価格は決して安くありませんが、リフトを3~4回利用すれば元が取れることが多く、計画的に活用すればとてもお得です。
  • 購入方法: 各リフト乗り場のチケットオフィスや地域の観光案内所で購入できます。クレジットカードも利用可能で、購入時に利用開始日を指定します。
  • 活用のポイント: このカードを使えば、通常なら何時間もかけて登る標高2,000メートル以上の地点に、あっという間に到達可能です。例えば、ヴァル・ガルデーナのセチェーダやアルペ・ディ・シウジ、コルティナのトファーナやファローリアといった有名な絶景スポットへ楽に行けます。午前中はAの山、午後はBの山といった効率的な周遊が可能に。ハイキングのプランを立てる際は、このカードで利用可能なリフトを地図で確認し、ルートに組み込むのがおすすめ。登りはリフト利用、下りは景色を楽しみながら歩くといった使い方も魅力です。

地域のバスネットワーク – 隅々までカバーする移動手段

ドロミーティ地域には、SAD(南チロル交通)やDolomiti Busなどのバス会社が網目のように路線を展開しています。これらのバスを上手に使えば、レンタカーなしでも多くの場所へアクセス可能です。

  • 時刻表の確認: 時刻表は各社のウェブサイト、現地のバス停、観光案内所で入手可能。特に「Südtirol Mobil」などの地域交通統合アプリをスマホにダウンロードすると、リアルタイムの運行情報や乗り換え案内が手軽に検索できて便利です。
  • 切符の購入方法: 切符はタバッキ(Tabacchi)と呼ばれるタバコや雑貨を扱う店、駅の窓口、バスターミナルの券売機で購入できます。一部のバスでは運転手から買える場合もありますが、お釣りがないことがあるため、小銭を準備しておくと安心です。数日間滞在する場合は、MobilcardやGuest Passといった乗り放題パスの利用がおすすめで、これにより切符購入の手間が省け経済的です。宿泊するホテルで無料または割引で提供される場合もあるので、チェックイン時に確認してみましょう。
  • 注意点: ドロミーティのバスは特に山間部の路線で本数が非常に限られていることがあります。1日に数本のみの運行や、日曜・祝日に運休する路線も珍しくありません。ハイキングへ出かける際は必ず帰路の最終バス時刻を確認し、乗り遅れないよう計画することが重要です。私自身もかつて最終バスに間に合わず、暗闇の山道を焦りながらバス停まで走った苦い経験があります。

やはり最強? – 現地でのレンタカー利用のすすめ

自由を最優先するなら、レンタカーがやはり最強の選択肢となります。特にハイキング愛好者にとっては、早朝の観光客が少ない時間帯に登山口の駐車場へ到着できる利点は計り知れません。例えばカレッツァ湖やブライエス湖といった人気スポットも、公共交通機関が始動する前の静かな時間に訪れ、湖面に映る逆さドロミーティを独占できるのはレンタカーならではの特典です。

ただし、夏のピークシーズンは人気スポットの駐車場が深刻な混雑に見舞われます。特にトレ・チーメ・ディ・ラヴァレードへの有料道路は午前早くに駐車場が満車になり、入場規制がかかるのが日常的。またブライエス湖周辺では大規模な交通規制が敷かれ、予約制シャトルバスか遠方の駐車場から徒歩でのアクセスを余儀なくされる期間もあります。

こうした情報は事前に観光局のウェブサイトなどで確認し、早め早めの行動を心掛けることが、ドロミーティで快適なドライブを楽しむカギとなるでしょう。

旅の準備と心構え – ドロミーティを120%楽しむために

アクセス方法がわかったら、次に取りかかるのは旅の具体的な準備です。ドロミーティの山々は、美しい一方で厳しい自然環境が広がっています。きちんとした準備と心構えこそが、安全で楽しい旅を実現する鍵となります。

持ち物リスト — これだけは絶対に忘れないで!

ドロミーティの気候はまさに「山の天気」。麓が晴れていても、標高が高くなると急に雨が降ったり風が強くなったりします。一日の中に四季があると捉え、それに対応可能な服装を用意することが鉄則です。

  • 服装:
  • レイヤリング(重ね着)が基本: ベースレイヤー(速乾性のTシャツや下着)、ミドルレイヤー(フリースや薄手のダウンジャケット)、アウターレイヤー(防水・防風ジャケット)を組み合わせて、気温の変化に柔軟に対応しましょう。
  • トレッキングシューズ: 必須アイテムです。足首をしっかりサポートするミドルカット以上で、防水機能(ゴアテックスなど)が備わっていると、急な雨やぬかるみも安心です。新品の靴は靴ずれのリスクが高いため、必ず日本で予め履き慣らしておきましょう。
  • トレッキングパンツ: 伸縮性と動きやすさを備えたものが望ましく、速乾素材がおすすめです。
  • その他: 街歩き用のスニーカー、日差しが強いときの帽子、サングラス、手袋(夏でも高所や早朝・夕方は冷えることがあります)
  • 装備:
  • バックパック: 日帰りハイキングなら20〜30リットル程度のデイパックが使いやすいです。レインカバーも忘れずに持参しましょう。
  • 水筒・ウォーターボトル: ハイキング中はこまめな水分補給が欠かせません。最低でも1.5リットルは持ち歩くことを推奨します。
  • 日焼け止め: 標高が高い場所では紫外線が非常に強いため、SPF50+の製品をこまめに塗り直しましょう。
  • 地図とコンパス: スマートフォンのGPSアプリは便利ですが、バッテリー切れや電波が届かない場所もあるため、紙の地図とコンパスの基本操作も習得しておくと安心です。
  • ヘッドライト: 秋は日没が早いためや、万が一の迷子・下山遅れの際に役立ちます。古い砦などを少し覗く際にも便利で、私は廃墟探訪には必ず携帯しています。
  • カメラ: この絶景はぜひ記録したいもの。私は風景撮影用にキャノンの広角レンズを、建物の質感や雰囲気を捉えるためにライカも携えています。予備バッテリーやメモリーカードも十分に準備してください。
  • その他:
  • 常備薬: 胃腸薬や痛み止め、絆創膏など、普段使い慣れているものを持参しましょう。
  • 現金(ユーロ): 山小屋(リフージョ)や小規模な売店ではクレジットカードが使えない場合があります。一定額の現金を用意しておくことが大切です。
  • 海外旅行保険証書: 怪我や病気に備え、保険会社の連絡先が載った証書を必ず携帯してください。

知っておきたいルールとマナー

美しい自然環境を未来に引き継ぎ、誰もが快適に過ごせるように、ドロミーティではいくつかのルールとマナーが設けられています。

  • 自然保護: ゴミは必ず持ち帰るのが基本です。高山植物の摘み取りや動物への餌やりは禁止されています。決められた登山道を歩き、植物や地形を傷つけないよう心がけましょう。
  • 挨拶: ハイキング中に出会う人には「Buongiorno(ボンジョルノ/こんにちは)」や「Salve(サルヴェ/やあ)」と挨拶を交わすのが習慣です。こうした気持ちのよいコミュニケーションが旅をより豊かにしてくれます。
  • ドローン: 国立公園や自然保護区内ではドローンの使用が厳しく制限されています。許可なく飛ばすことは法律違反となるため、訪れる前に規制区域を必ず確認しておきましょう。
  • 山小屋(リフージョ)での過ごし方: 山小屋に泊まる場合、多くが相部屋です。消灯時間を守り、他の宿泊者の迷惑にならないよう静かに過ごす配慮が必要です。共有スペースの使い方も小屋のルールに従ってください。

トラブル発生!その際のサバイバル術

旅先ではトラブルが起こることもありますが、事前に対処法を把握しておくことで冷静に対応できます。

  • 道に迷ったら: まずは落ち着いて現在地を確認します。地図とコンパス、またはGPSアプリで自分の位置を把握し、来た道を引き返すのが基本です。無理に進もうとするのは危険です。
  • 天候の急変: 山の天気は急変しやすいです。雷が鳴り出したら、すぐに稜線や山頂から離れ、窪地やできるだけ低い場所へ避難しましょう。雨具を着て体温が下がらないように注意してください。
  • 公共交通機関の遅延・運休: ストライキや悪天候でバスや列車が止まることがあります。駅やバスターミナルの窓口で最新情報を入手し、代替ルート(別路線やタクシーなど)を検討しましょう。言葉に不安がある場合は、翻訳アプリや行き先を記したメモを活用すると伝わりやすいです。
  • 盗難・紛失: パスポートや貴重品を盗まれた場合は、すぐに最寄りの警察(CarabinieriまたはPolizia)に届け出て盗難証明書を発行してもらいます。パスポート紛失時には、[在イタリア日本国大使館または総領事館](https://www.it.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html)へ連絡し、再発行の手続きを指示に従ってください。万が一に備え、パスポートの顔写真ページやEチケット、ホテル予約確認書のコピーは印刷して持ち歩くほか、スマートフォンやクラウドに保存しておくと安心です。
  • 緊急連絡先: 救急、警察、消防すべての緊急連絡番号は「112」です。

朽ち果てた記憶を巡る旅

ドロミーティへの具体的なアクセス方法を知った今、あなたはどんな旅を思い描いているでしょうか? セチェーダの稜線を歩きたいですか?それともブライエス湖のボートからエメラルドグリーンの湖面を眺めるでしょうか?どちらも素晴らしい体験に違いありません。しかし、もしあなたが私と同様に、過ぎ去った時間の痕跡に心を惹かれるのなら、少し異なる視点でこの地を巡ることをおすすめします。

ドロミーティはかつて、オーストリア=ハンガリー帝国とイタリア王国が国境をめぐり争った、第一次世界大戦の激戦地でした。チンクエ・トッリには点在する塹壕跡の野外戦争博物館があります。ラガツォイの山中には迷路のように巡らされたトンネルも残っています。そして今、スリリングなアウトドア体験として知られる「ヴィア・フェラータ」も、もともとは兵士たちが前線へ物資を運ぶために岩壁に設置した軍事用通路だったのです。

私はファルツァーレゴ峠に遺されたオーストリア軍の要塞に立ち、銃眼越しにかつての敵陣を眺めた時のことを忘れられません。風の音だけが響く静寂の中で壁の弾痕に触れると、100年以上前の兵士たちの息遣いや恐怖が冷たい石を通じて伝わってくるように感じられました。それは華やかな絶景を眺めるだけでは決して味わえない、この土地が秘めるもう一つの顔、深く、切ない記憶の層なのです。

この地を旅するとは、単に美しい景色を楽しむだけではありません。地球という壮大な営みが作り上げた自然美と、人間が刻み込んだ歴史の傷跡、その両方に向き合う時間なのです。アクセスという現実的な障壁を一つずつ乗り越え、自分の足でこの地に立った時、きっとドロミーティはガイドブックにはない、あなただけの物語を見せてくれるでしょう。さあ、カメラと少しの勇気を携えて、天空の城塞と朽ち果てた記憶をめぐる旅に出かけてみませんか。

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