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神々の島バリ、波の記憶を刻む旅へ。ローカルサーファーと巡る秘密のビーチガイド

エメラルドグリーンに輝く棚田、天空にそびえる火山、そしてどこまでも続く紺碧の海。インドネシア、バリ島は、訪れる者の五感を揺さぶり、魂を浄化する不思議な力を持つ島です。世界中の人々がこの島に惹きつけられる理由は、単なるリゾート地としての美しさだけではありません。バリ・ヒンドゥーの深い精神文化が人々の暮らしに根付き、島全体がひとつの聖域のような空気をまとっているからでしょう。ガムランの調べが風に乗り、道端に毎日手向けられるチャナン(お供え物)が、神々と共にある日常を静かに物語っています。

しかし、この神々の島にはもうひとつの顔があります。それは、世界中のサーファーを虜にしてやまない、完璧な波がブレイクする「サーフ・パラダイス」としての顔。クタやチャングーといった有名なサーフタウンは、昼夜を問わず活気に満ちあふれています。けれど、あなたがもし、人々の喧騒から離れ、この島の本当の波と、ありのままの自然に触れたいと願うなら。その答えは、観光マップには載らない、ローカルサーファーだけが知る秘密のビーチに隠されています。

この記事は、そんな特別な体験を求めるあなたのための招待状です。ガイドブックを閉じて、ローカルサーファーの背中を追いかけてみませんか。彼らが「マイ・ビーチ」と呼ぶ特別な場所へ。そこでは、チューブの向こうに沈む夕日があり、波待ちの時間に交わす拙い言葉があり、ビーチサイドのワルン(食堂)で分かGち合うビンタンビールがあります。それは単なるサーフィンではなく、バリの魂に触れる、忘れられない旅の記憶となるはずです。さあ、ウェットスーツと好奇心を胸に、波が紡ぐあなただけの物語を探しに行きましょう。

目次

なぜバリ島はサーファーの楽園と呼ばれるのか

バリ島が「サーファーの楽園」と称される理由は明白です。それは、この地理的な奇跡と豊かな文化が見事に調和しているからに他なりません。バリを訪れるサーファーは、ただ波に乗るだけでなく、まるで地球の鼓動を直に感じ取るかのような体験を得ることができるのです。

一年を通じてどこかで波が立つ奇跡

バリ島の最大の魅力は、その卓越した多様性と安定感にあります。インド洋から絶え間なく押し寄せる大きなうねり(スウェル)が、複雑に入り組んだ島の海岸線やリーフにぶつかり合い、様々な種類の波を生み出しています。

乾季(おおよそ4月から10月)には、南東の貿易風が沖から岸へと吹くことでオフショアコンディションとなり、島の南西に位置するウルワツ、パダンパダン、インポッシブルズなど、世界的に知られるサーフスポットの波の面を完璧に整えます。まるで鏡のようにつるりとした波面には、青空が映り込み、夢のような光景が日常となる季節です。

一方で雨季(11月から3月頃)になると、西風が吹き始め、これまで風の影響を受けていた東海岸のヌサドゥアやスランガンが、一変して最高のサーフコンディションを迎えます。つまり、バリ島では季節ごとに風向きが変わり、どちらかの海岸線が常にベストシーズンとなるのです。一年を通じてサーフィンが楽しめる、まさにサーファーにとっての約束の地といえます。

初心者からプロフェッショナルまで幅広く受け入れる懐の深さ

バリの波はその多様性ゆえに、サーファーのレベルを問いません。クタやレギャンといったビーチブレイクは砂地の海底で波が崩れるため、初心者が安心して練習できる環境です。数多くのサーフスクールが軒を連ね、経験豊かなインストラクターが笑顔で指導を行っています。

ある程度スキルを身につけた中級者には、チャングー付近のエコ・ビーチやバトゥ・ボロンが適しています。これらのポイントは穏やかでメローな波質を持ち、ロングボードでゆったりとクルージングしたり、ショートボードで技を磨いたりするのに最適です。世界中のサーファーと波を共有する喜びを味わえます。

そして、技術の限界に挑みたい上級者やプロにとっては、ブキット半島がその真価を発揮します。ウルワツの切り立つ崖下で割れるレフトハンダーの波は、美しさと危険性を兼ね備え、一瞬の油断も許さない厳しさがあります。隣接するパダンパダンは、バレル(波のトンネル)を求めるチューブライダーズの聖地。鋭いサンゴ礁(リーフ)の上で波が割れるため、高度な技術や豊富な経験、そして波に対する敬意が不可欠とされます。

このように、サーファー自身のレベルやその日の気分に合わせ、多彩なポイントから選択できることも、バリ島がサーファーの楽園と呼ばれる所以です。

波と共に息づく豊かなサーフカルチャー

バリ島にサーフィンが伝わったのは1930年代とされますが、本格的なサーフカルチャーが花開いたのは1970年代のこと。世界中から波を追い求めるヒッピーたちがこの島に訪れ、その魅力が口コミで広まりました。彼らは地元の人々にサーフィンを教え、バリの人々は持ち前の優れたバランス感覚で瞬く間に技術を習得していきました。

現在では、サーフィンはバリ島の暮らしに深く根付いています。ビーチでは子供から大人、男女問わず自然にサーフボードを手に取り、波に向かっていきます。彼らにとってサーフィンは単なるスポーツではなく、海という偉大な自然との対話であり、神々への祈りの一形態とも言えるでしょう。

この島には、技術にとどまらないサーフィンの精神、いわば「アロハ・スピリット」に相当する「バリ・スピリット」が息づいています。それは自然への感謝、他者への敬意、そして「今この瞬間」を心から楽しむ姿勢を意味します。地元のサーファーと共に海に入ることで、そのスピリットを肌で感じ取ることができるでしょう。技術のみならず、サーファーとしての魂がバリ島の波によって育まれていくのです。

インドネシア共和国観光省の公式サイトでも、バリ島の多彩なアクティビティが紹介されており、サーフィンがこの島の文化に深く根ざしていることが紹介されています。

ツーリストの知らない「秘密のビーチ」へ

バリ島のサーフィンスポットといえば、真っ先にクタ、レギャン、スミニャック、そしてチャングーの名前が挙がります。これらのエリアはアクセスが良く、サーフショップやカフェ、宿泊施設が豊富に揃っているため、確かに便利で活気にあふれています。ただし、その人気ゆえに、ピークシーズンには海がサーファーで埋め尽くされ、まるで都会の交差点のような混雑になることも少なくありません。

もしあなたが、人混みを避けて静かな環境で波と向き合いたい、あるいはまだ手つかずの自然の中でサーフィンを楽しみたいと考えているなら、思い切って観光客の群れから一歩外に出てみてください。そこで待っているのは、ローカルが大切に守り続けてきた「秘密のビーチ」です。

これらのビーチは、時にアクセスが難しく、周辺施設が必ずしも充実していないこともあります。しかし、その不便さに見合う以上の価値があります。人のいないラインナップで波を独り占めできる贅沢、断崖の下に広がるプライベートビーチの絶景、そして何よりも商業化されていないバリの本来の姿を味わえるのです。ローカルのサーファーガイドは、そうした宝石のような場所へと案内してくれる心強い存在です。

南部ブキット半島の隠れた名所

バリ島南端の石灰岩台地、ブキット半島。ここはウルワツやパダンパダンなど世界的に有名なサーフスポットがある一方、そうした有名ポイントの陰に隠れる形で息を呑むほど美しい小規模のビーチが点在しています。

グリーンボール・ビーチ(Green Bowl Beach)

名前の由来は、満潮時に藻が岩に覆いかぶさり、海面に緑色のボウルのように見えることから。数百段の急なコンクリート階段を下りた先に、この隠れた楽園があります。階段の昇降は大変ですが、その先に待つ景色と波は格別。パワフルで速いライトハンダーの波は、中上級者にとってまさに理想的なプレイグラウンドです。人も少なく、透明度の高い海で思う存分サーフィンに集中できる至福の時間が味わえます。ただし潮流が強い場合もあるため、単独行動は避け、必ず地元の波を熟知したガイドと一緒に訪れてください。階段付近には野生のサルも多く、荷物管理には十分注意が必要です。

ニョンニョン・ビーチ(Nyang Nyang Beach)

最近SNSで話題にはなっているものの、まだ訪れる人は少ない秘境的なビーチです。未舗装の長い道を下ると、1.5キロに及ぶ白い砂浜とターコイズブルーの海が広がります。その壮大さは、まるで地球の果てにいるかのような錯覚を覚えさせるほど。数か所に点在するサーフブレイクでは、条件が整えば貸し切りのファンウェーブを堪能できます。周辺にあるのは小さな数軒のワルンのみで、商業的な雰囲気は皆無です。飲料水や軽食は持参するのがおすすめ。ここもまた、辿り着くまでの道のりが冒険であり、その分だけ得られる絶景と静けさが魅力です。

グヌン・パユン・ビーチ(Gunung Payung Beach)

ブキット半島東側に位置し、比較的新しく知られるようになった美しいビーチ。こちらも長い階段を下りて行く形ですが、その先に穏やかで透明な海が広がっています。波は限られた時にしか良くありませんが、条件が整えば初心者でも楽しめる穏やかなメローウェーブがブレイクします。サーフィン以外にシュノーケリングや白砂の浜でのんびり過ごすのにも最適です。近くにあるバリ・ヒンドゥーの寺院「プラ・ダレム・グヌン・パユン」は神聖な場所なので訪れる際は露出の少ない服装で敬意を示しましょう。

西部エリアへ足を伸ばすと、自然が残る波が待つ

クタやスミニャックの喧騒から車で数時間走ると、バリ島の西部にたどり着きます。そこでは風景が全く変わり、広大なライステラスや黒砂のビーチ、ゆったりとした田舎町の雰囲気が漂います。ここにはまた違った魅力を持つサーフスポットが点在しています。

メデウィ(Medewi)

バリで最も長いレフトハンダーとして知られるメデウィ。玉石の海底を滑るように乗り継げる波は非常にメローで、ロングボーダーやファンボーダーには理想の場所です。数百メートルに渡るロングライディングが可能で、一度波に乗れば空中を漂うような感覚を味わえます。周囲はのどかな漁村で、イスラム教徒を中心としたコミュニティが形成されています。早朝にはモスクからアザーンが流れ、ブキット半島とは異なる文化の風情が感じられるのも特徴です。ローカルサーファーも親切で、和やかなムードでセッションが楽しめます。

バリアン(Balian)

メデウィより南に位置するバリアンは、川が海に流れ込むリバーマウスに形成されたサンドバーで知られています。パワフルなAフレームの波がブレイクし、ショートボーダーからの人気も高いスポットです。黒砂のビーチにヤシの木が並ぶ風景はワイルドで、自然そのものの力強さを感じられます。近年はヨガリトリートやオーガニックカフェが増え、ナチュラル志向のサーファーたちが集まるコミュニティとしても注目されています。都会の喧騒を離れ、心身をリフレッシュしたい人にぴったりの場所です。

これらの秘密のビーチを訪れることは、単なるサーフィン体験を超えています。それはバリ島の多彩な自然や文化に触れる旅であり、自分自身と静かに向き合う貴重な時間をもたらしてくれるでしょう。

ローカルサーファーと繋がる方法 – 旅を特別な体験に変える鍵

秘密のビーチの存在を知っても、それだけでは旅の始まりにはなりません。最高の波を体験し、安全に楽しむためには、その場所に精通した地元のサーファーの存在が欠かせません。彼らは、観光客ではなかなか知ることのできないバリの本当の姿へとあなたを案内してくれる、最良のガイドであり、時に友人にもなり得る存在です。では、どのようにして彼らと繋がることができるのでしょうか。

ローカルサーファーガイドの見つけ方

ローカルガイドを見つける方法は一つに限りません。少しの勇気とコミュニケーション能力さえあれば、多様なチャンスが広がっています。

評判の良いサーフスクールやサーフキャンプを通じて

もっとも確実で安心できる手段の一つは、信頼性の高いサーフスクールやサーフキャンプを経由して紹介してもらうことです。クタやチャングーなどの主要エリアにあるスクールには、豊富な経験を持つ地元のインストラクターが多く在籍しています。通常のグループレッスンに加えて、「プライベートガイド」や「サーフツアー」といった形態で、あなたのスキルや希望に応じたサーフスポットへ案内してくれるサービスを提供していることが多いです。事前にウェブサイトや口コミを調べ、信頼できるスクールに問い合わせるのが賢明でしょう。この方法のメリットは、料金体系が明瞭であり、万が一の際にも保険などがしっかり整っている点にあります。

ローカル経営のワルンやサーフショップでの交流

よりディープな関係を築きたい場合は、地元の人が経営する小さなワルン(食堂)やサーフショップを訪ねてみましょう。特にサーフポイントのすぐ近くにあるワルンは、地元サーファーの社交場となっています。そこでビンタンビールを飲みながら、あるいはナシゴレンを味わいつつ、店主や常連客に声をかけてみてください。「良い波のスポットを探しているのですが、ガイドしてくれる方はいませんか?」と。初めは少し勇気がいるかもしれませんが、バリの人々は親切でフレンドリーです。片言の英語やインドネシア語でも、あなたの情熱が伝われば快く助けてくれるでしょう。思わぬ出会いから最高のガイドが見つかることもあります。

SNS(Instagram等)を活用する方法

現代的な手法として、InstagramなどのSNSも非常に役立ちます。`#balisurfguide`、`#localbali`、`#surfariguide`などのハッシュタグで検索すると、個人でガイドを行っている地元サーファーのアカウントが多数見つかります。彼らの投稿する写真や動画をチェックすれば、人柄やサーフスタイル、ガイドエリアの雰囲気が伝わってきます。気になる相手がいれば、ダイレクトメッセージ(DM)で料金やプランについて問い合わせてみましょう。この方法の利点は、事前に相手をある程度理解でき、直接コミュニケーションを取れる点です。ただし、個人間のやり取りとなるため、料金やサービス内容の確認はより慎重に進める必要があります。

ガイド依頼時のコミュニケーションと準備

理想のガイドを見つけたら、その旅を最高の体験にするために、しっかりと準備し丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。ここを怠るとトラブルの原因になり、満足度も下がってしまいます。

料金交渉とサービス内容の確認の手順

ガイドをお願いする際は、まず料金およびサービス内容をはっきりさせることが重要です。料金はガイドの経験やサービス内容によって異なりますが、一般的には半日(約4時間)または一日(約8時間)のチャーター形式が多く見られます。

交渉時に必ず確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 料金: 半日または一日あたりの費用。時間延長時の追加料金はあるか。
  • 時間帯: 開始と終了時間。移動時間が含まれるかどうか。
  • 交通手段: 車やバイクでの送迎は含まれているか。燃料代はどちらが負担するのか。
  • レンタル品: サーフボードやリーシュコードのレンタルが料金内か否か。別途の場合、レンタル場所や費用はどの程度か。
  • その他: 飲料水や軽食などは含まれているか。
  • 支払い方法: 現金のみか、電子マネーも使えるか。支払いは前払いか後払いか。

これらを事前にしっかり確認し、双方が納得した上で契約しましょう。特に個人ガイドの場合、口頭だけでなくメッセージアプリなどにやり取りを記録しておくと、後日の誤解やトラブルが防げます。

持ち物と準備:万全の体制で波に臨むために

安全かつ快適なサーフトリップを実現するためには、万全の準備が不可欠です。以下は、ローカルガイドと秘密のビーチへ向かう際に持参すべきものの例です。

  • 日焼け対策:
  • 日焼け止め: SPF50+、PA++++の高性能タイプ。特にサンゴ礁に優しい「リーフセーフ」製品を選ぶことを強くおすすめします。バリの美しい海を守るため、環境への配慮を忘れてはいけません。
  • ラッシュガード: 長袖タイプが望ましいです。日焼け防止に加え、クラゲやリーフでの擦り傷防止にも役立ちます。
  • サーフハットやサングラス: 強烈な日差しから頭部や目を守るために。
  • サーフギア:
  • サーフボード: 自分のレベルに適したもの。レンタルを希望する場合は、事前にガイドにサイズや種類を伝えておくとスムーズです。
  • リーフブーツ: 秘密のビーチの多くはサンゴ礁や岩場の海底です。足を傷つけないために必携のアイテムです。
  • ワックス、予備のフィン、リーシュコード: 自分のボードを使用する場合は、万が一の破損に備えて予備を持参すると安心です。
  • その他:
  • 防水バッグ(ドライバッグ): ボート移動や突然のスコールに備え、貴重品や電子機器を保護します。
  • 着替えやタオル: サーフィン後の着替えや体を拭くために。吸水性の高いマイクロファイバータオルが便利です。
  • 現金(インドネシアルピア): 小さなワルンや駐車場など、カードが使えない場所が多いため、小額紙幣を中心に十分な現金を準備しましょう。
  • 応急処置キット: 消毒液、絆創膏、鎮痛剤など。リーフで切り傷を負うことはよくあるため、すぐ対応できる準備があると安心です。
  • 飲み水・軽食: ガイドが用意してくれるケースもありますが、念のため自身でも準備するとよいでしょう。熱中症予防にもつながります。

禁止事項やルール:ローカルへの敬意を大切に

秘密のビーチは、地元コミュニティが大切に守り続けてきた場所です。訪問者としての自覚を持ち、彼らのルールや文化に敬意を払うことが不可欠です。

  • ゴミは必ず持ち帰る: 最も基本的なマナーです。自分のゴミはもちろん、可能なら落ちているゴミも拾うくらいの気持ちを持ちましょう。
  • 聖なる場所への配慮: ビーチ近くには寺院(プラ)や祭壇が点在します。無断で立ち入ったり、大声を出したりしないこと。特に女性の場合、月経中は寺院敷地への立ち入りが禁じられている場合が多いため注意が必要です。
  • 服装の規定: 寺院訪問時は肩や膝を隠す服装が求められます。サロン(腰巻)やスレンダン(帯)の着用が必須となることもあり、ガイドの指示に従ってください。
  • 挨拶と笑顔: ローカルの人とすれ違う際は、「スラマッ・パギ(おはよう)」「スラマッ・シアン(こんにちは)」などの挨拶を笑顔で交わすと、コミュニケーションが円滑になります。
  • 波の優先権(プライオリティ)を尊重すること: 海の中では、波が割れ始めるピークに最も近いサーファーが優先して波に乗れます。前乗り(他人の妨害)は絶対避け、地元サーファーへのリスペクトを忘れないようにしましょう。

これらの準備と心得があれば、あなたのサーフトリップはより深みのある満足できる体験になるでしょう。

トラブル対策 — いざという時の備え

どんなに準備しても、旅先で予期せぬトラブルは起こりえます。大切なのは慌てず冷静に対処すること。事前に対応方法を把握しておくだけで、心の余裕が大きく変わります。

天候不良や波の状況変化によるキャンセル

バリの天候は変わりやすく、予定日に大雨や雷、もしくは波がほぼないフラットな状況になることもあります。こうした場合に備え、事前にガイドと取り決めを済ませておくことが重要です。

  • キャンセルポリシーの確認: 悪天候でツアーが中止になった際の料金返金や延期の対応について、詳細を確認しておきましょう。
  • 代替スポットの相談: ガイドは島のコンディションに詳しいため、メインスポットが不可でも、風を避けられる別のポイントでサーフィンが可能か相談してみてください。無理に危険な状況で海に入ることは避けましょう。

怪我をした場合の対処

サーフィン中の怪我は決して珍しくありません。リーフでの切り傷やフィンによる裂傷、ボードとの衝突などリスクがあります。

  • 応急手当: まずは海から上がり、清潔な水で傷口を丁寧に洗い流して、持参の応急処置セットで手当をします。
  • 医療機関受診: 傷が深かったり感染の可能性がある場合は、すぐに最寄りのクリニックや診療所で診察を受けましょう。ガイドに頼めば適切な医療機関への案内や送迎をしてくれます。バリには24時間対応のインターナショナルクリニックも複数あります。
  • 海外旅行保険の必須性: バリでの医療費が高額になることも考えられます。出発前には治療費や救援費用を十分カバーする海外旅行保険に加入し、保険証券や緊急連絡先をすぐ取り出せる場所に保管しておくことが重要です。キャッシュレス対応の保険なら、さらに安心です。

ガイドとの意見やトラブルが起きたら

もしガイドとの間に考えの相違や不満が生じた場合、感情的にならず冷静に話し合うことが大切です。「このようにしてほしい」「この点が不安」と、自分の意見をはっきりかつ丁寧に伝えましょう。多くの場合はコミュニケーション不足が原因です。それでも問題が解決しない場合は、無理にツアーを続行せず、料金清算のうえ途中で終了する勇気も必要です。特に安全に関わることについて無理強いがあれば、はっきり断ってください。

このようなトラブルを防ぐためにも、最初のガイド選びと事前のコミュニケーションが何より重要になります。 また、現地の安全情報や緊急連絡先を把握しておくことも欠かせません。詳しくは在デンパサール日本国総領事館のウェブサイトをご覧になり、渡航前に目を通しておくことをおすすめします。

サーフィンだけじゃない!波待ちの時間に楽しむローカルカルチャー

ローカルサーファーと共に巡る旅の醍醐味は、サーフィンそのものにとどまりません。波が良くない時間帯や、サーフィンで疲れた体を休めるひとときこそ、バリの豊かな文化に深く触れる絶好の機会となります。観光ガイドには載っていない彼らの生活に溶け込むことで、旅が一層色彩豊かなものへと変わるのです。

ビーチ沿いのワルンで味わう本格的な味覚

サーフィンで空腹になった体に、ビーチサイドにあるワルン(大衆食堂)で味わうローカルフード以上に美味しいものはありません。プラスチックの椅子に腰掛け、潮風を感じながら食事をする体験は、高級レストランでは決して味わえない特別なものです。

観光客向けのレストランで提供される定番のナシゴレン(焼き飯)やミーゴレン(焼きそば)も美味ですが、ぜひ地元の人が集まるワルンで、普段彼らが食べているメニューにチャレンジしてみてください。

ガイドに「Apa yang enak di sini?(アパ ヤン エナッ ディ シニ?=ここで美味しいものは何ですか?)」と尋ねれば、きっと得意げにおすすめを教えてくれるでしょう。豚の丸焼き「バビ・グリン」、鶏肉やヤギ肉の串焼き「サテ」に甘辛いピーナッツソースをかけたもの、スパイスでじっくり煮込んだ肉料理「ルンダン」など、バリには食欲をそそる料理が数多くあります。ココナッツの殻で炊かれたご飯「ナシ・チャンプル」は、お好みのおかずを指差して選ぶスタイルで、自分だけの一皿を作る楽しみも味わえます。

そして、食事と共に欠かせないのが冷えた「ビンタンビール」です。汗をかいた体にすっと染み渡る南国独特の爽やかな味わい。オレンジ色に染まる夕空を眺めながら、ガイドとその日の波について語り合うひとときが、忘れがたい思い出として心に刻まれていきます。

バリ・ヒンドゥーの精神世界に触れる

バリの人々の暮らしは、独特な宗教観を持つバリ・ヒンドゥーと深く結びついています。サーフィンにおいてもこれは例外ではありません。彼らにとって海は単なる遊び場ではなく、神々が宿る神聖な場所であり、恵みとともに時に災いをもたらす偉大な存在です。

秘境のビーチの片隅には、小さな祠や寺院(プラ)が祀られていることが多く、サーフィン前にそこで静かに手を合わせ、今日の安全や良い波への感謝を祈るローカルサーファーの姿は非常に印象深いものです。彼らの自然な振る舞いからは、自然に対する深い畏敬の念が伝わってきます。

また、バリの至る所で見られる「チャナン・サリ」も彼らの信仰心を象徴しています。ヤシの葉で作られた小さな器に、色とりどりの花びらやお米、お香などを盛り、神々への感謝と世界の平和を祈って毎日新たに手向けられます。ガイドにチャナンの意味を尋ねれば、花の色が表す神々(赤はブラフマー、黒はヴィシュヌ、白はシヴァなど)や宇宙観について教えてくれるかもしれません。

ローカルサーファーとの対話を通して、彼らが自然と共生し、信仰を日常に取り入れる様子を知ることは、サーフィンの技術を学ぶ以上に価値のある体験となるでしょう。これは、私たち人間が自然の一部であることを思い起こさせる、深いスピリチュアルな学びの時間でもあるのです。

持続可能なサーフトリップのために私たちができること

私たちが愛してやまないバリの美しい海と豊かな文化は、決して永続的に守られるものではありません。近年、バリ島は急速な観光開発に伴い、環境問題が深刻化しています。特にプラスチックゴミが大きな課題であり、雨季には多量のごみが川を流れ、海岸線に散乱して美しいビーチが汚される様子も見受けられます。

この貴重な場所を次世代に残すためには、訪れる私たち一人ひとりが責任ある行動を意識することが今、強く求められています。持続可能なサーフトリップ、すなわち「サステナブル・サーフィン」を実践することは、バリへの感謝の気持ちを示すとともに、自分たち自身の未来への投資でもあるのです。

環境への配慮を第一に

持続可能な旅のスタートは、環境への影響をできるだけ抑えることから始まります。

  • マイボトル・マイバッグの携帯: ペットボトルやレジ袋の利用を控え、マイボトルやエコバッグを積極的に使用しましょう。バリの多くのカフェやレストランでは、無料で給水できるウォーターサーバーが設置されています。
  • リーフセーフな日焼け止めを選ぶ: 一般の日焼け止めに含まれるオキシベンゾンやオクチノキサートといった化学物質は、サンゴの白化を促進する原因と指摘されています。サンゴ礁に悪影響を及ぼさない「リーフセーフ」または「ノンケミカル」と表記された製品を選ぶことが、バリの繊細な海洋生態系を守るためにサーファーとして欠かせない配慮です。
  • ビーチクリーン活動への参加: 滞在中にビーチクリーンが開催されていれば、ぜひ積極的に参加してください。地域の人々と交流し、環境問題に対する意識を高め合う貴重な機会となります。たとえ活動に参加できなくとも、サーフィンの後に自分のゴミや目に付いたゴミを少しでも拾うことが、大きな変化を生み出します。バリではROLE Foundationなどの団体が環境教育やビーチクリーン活動に熱心に取り組んでいます。彼らの活動を知り、応援することも貢献の一つです。

地元コミュニティの支援を心がける

私たちの旅が訪れる土地の経済や文化に良い影響をもたらすことも、持続可能な旅の重要なポイントです。

  • 地元のビジネスを利用する: 宿泊先は外資系の大型ホテルではなく、地元が経営する「ロスメン」や「ホームステイ」を選びましょう。食事はチェーン店よりも家族経営のワルンがおすすめです。お土産には地元職人の手作り工芸品を選ぶことで、私たちのお金が地域のコミュニティへ直接還元され、生活向上と伝統文化の継承に寄与します。
  • 文化を尊重し学ぶ姿勢を持つ: バリの文化や習慣に敬意を払うことは基本中の基本ですが、さらに踏み込んで簡単な挨拶を現地語で覚えたり、歴史や宗教について学ぶ姿勢を持つことで、より深い相互理解と尊敬の絆を築けます。

私たち一人ひとりの選択が、バリの未来をつくり出していきます。ただ波に乗るだけの観光客で終わらず、この島の自然と文化を守り育てるパートナーとなることこそ、本当の意味で「楽園」を体験する鍵ではないでしょうか。

波が紡ぐ、あなただけのバリ物語

バリの波は単なる水の塊ではありません。それはインド洋の遥か遠くから旅を続けてきた地球のエネルギーであり、島の魂が宿るメッセンジャーでもあります。波に身を任せることは、自然と一体になる神聖な儀式のような体験です。

地元のサーファーと共に訪れる秘密のビーチへの旅は、ただのサーフスポット巡りとはまったく異なります。地図に載っていない小道を進み、崖を下り、観光客の知らない景色に出会う冒険なのです。言葉の壁を越えて笑顔を交わし、ワルンで同じ釜の飯を食べ、波を分かち合うことで芽生える温かな友情の物語でもあります。そしてまた、自然への畏敬の念やバリ・ヒンドゥーの深い精神性に触れながら、自分自身の内面を見つめ直すスピリチュアルな探求でもあるのです。

あなたがバリのシークレットポイントで波を待つとき、聞こえてくるのは風のささやきと、リーフに打ち寄せる波の音だけかもしれません。隣には、日に焼けた顔で遠くの水平線を見つめるローカルの友人がいるでしょう。その静寂の中で、きっとあなたは感じるはずです。今まさに、自分が地球という大きな生命体の一部であり、この壮大な自然の中に生きているのだということを。

波のチューブを駆け抜ける瞬間の高揚も、夕日に染まる海辺で仲間と笑い合った時間も、すべてがあなたの人生という名のサーフボードに刻まれる、かけがえのない記憶のワックスとなっていくでしょう。旅を終え日常に戻った後も、ふとした瞬間にバリの潮の香りや太陽の温もりを思い出すに違いありません。

さあ、次はあなたがその物語を紡ぐ番です。勇気を持って一歩を踏み出し、あなただけの波を求めて旅立ってください。神々の島バリは、その完璧な波と温かな人々の笑顔で、いつでもあなたを迎えてくれます。スラマッ・ジャラン(良い旅を)。

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