どこか懐かしく、それでいて新鮮な感動を与えてくれる国、ポルトガル。ヨーロッパの最西端に位置し、大西洋の風に吹かれながら独自の文化を育んできたこの国は、訪れる者の心を掴んで離しません。石畳の坂道を黄色い路面電車が走り抜けるリスボンの街並み、ポートワインの香りが漂うポルトの歴史地区、そしてどこまでも続く紺碧の海と黄金の砂浜が広がるアルガルヴェ地方。そのどれもが、忘れられない旅の記憶を刻んでくれるはずです。
大航海時代の栄光を今に伝える壮麗な建造物、素朴で心温まる人々の暮らし、そして新鮮な魚介をふんだんに使った絶品グルメ。ポルトガルの魅力は、一言では語り尽くせません。この記事では、そんなポルトガルの基本情報から、旅の計画に欠かせないベストシーズン、アクセス方法、おすすめの観光スポット、グルメ、費用まで、あなたの旅を完璧なものにするための情報を余すことなくお届けします。さあ、大西洋の果てに広がる魅力的な国、ポルトガルへの旅支度を始めましょう。
ポルトガルってどんな国?基本情報と知っておきたい魅力

旅の計画を始める前に、まずはポルトガルという国について少し深く理解しておきましょう。その国の歴史や文化の背景を知ることで、旅がより一層豊かなものとなります。
ヨーロッパ最西端に位置し、大航海時代の記憶が息づく国
ポルトガルは、ヨーロッパ大陸の南西部、イベリア半島の西端に位置する共和国です。東と北ではスペインと国境を接し、西と南は大西洋に面しています。首都はリスボンで、国土の面積は日本の約4分の1程度、北海道とほぼ同じ大きさです。このコンパクトな国土には、多様な自然の景観と豊かな文化が凝縮されています。
ポルトガルの歴史において欠かせないのが、15世紀から16世紀にかけて栄えた「大航海時代」です。ヴァスコ・ダ・ガマやフェルディナンド・マゼランといった偉大な航海者を輩出し、世界中に広大な植民地を築き上げ、莫大な富を手に入れました。その輝かしい時代の名残は、国内のあらゆる場所に残る壮麗な建築物や文化の中に今も息づいています。特に、海への憧れや異国の要素を巧みに取り入れた「マヌエル様式」の建築は、ポルトガルならではの唯一無二の芸術といえるでしょう。
基本情報を押さえよう
旅に出る前に知っておきたい基本的な情報をまとめました。
- 正式名称: ポルトガル共和国 (República Portuguesa)
- 首都: リスボン (Lisbon)
- 人口: 約1,027万人(2023年時点)
- 面積: 約92,225平方キロメートル
- 言語: ポルトガル語。観光地や主要都市のホテル、レストランでは英語も広く通じます。
- 通貨: ユーロ (€)。1ユーロは約168円(2024年5月現在)。為替レートは変動するため、渡航前に最新情報を確認しましょう。
- 時差: 日本より9時間遅れ。サマータイム期間(3月最終日曜日〜10月最終日曜日)には8時間遅れになります。
- 宗教: 大多数がカトリック教徒です。
- ビザ: 観光目的で90日以内の滞在であればビザは不要です。ただし、パスポートの残存有効期間がシェンゲン協定加盟国出国時から3ヶ月以上必要となります。
ポルトガルの知られざる魅力
ポルトガルの魅力は、美しい世界遺産や街並みだけにとどまりません。旅人の心を惹きつけるいくつかのキーワードをご紹介します。
アズレージョ:青いタイルで彩る芸術
ポルトガルの街を歩くと、教会の壁や駅の構内、さらには一般の民家の壁まで美しい装飾タイルが施されているのに気づくでしょう。これは「アズレージョ」と呼ばれる伝統的なタイル装飾で、多くは青を基調としています。歴史的な出来事、宗教的な物語、風景などが描かれており、単なる装飾を超えてポルトガルの歴史と文化を伝える芸術作品となっています。お土産屋さんでは、小さなアズレージョのタイルも販売されているので、旅の記念として一枚購入するのもおすすめです。
ファド:心揺さぶる哀愁の歌
「ファド」はポルトガルに古くから伝わる民族歌謡で、その起源ははっきりしませんが、船乗りの妻たちが夫の無事を祈って歌ったことに由来すると言われています。ポルトガルギターの物悲しい響きにのせて、人生の喜びや悲しみ、郷愁、運命(ファド)を歌い上げます。リスボンのアルファマ地区やバイロ・アルト地区には、ファドを聴きながら食事が楽しめる「カーザ・デ・ファドス」というレストランが多く存在します。旅の夜に、静かに心に染み入るファドの歌声を味わうのも素敵な体験になるでしょう。
温かさあふれる人々と素朴な暮らし
ポルトガルを旅して感じられるのは、人々の温かさとおおらかさです。困っていると親切に声をかけてくれたり、片言のポルトガル語で話しかけると満面の笑みで応じてくれたりします。観光地化があまり進んでいない素朴な街角では、今もゆったりとした時間が流れています。カフェのテラスでエスプレッソ(ポルトガルでは「ビッカ」と呼びます)を片手に談笑する人々や、窓辺で洗濯物を干すおばあさんの姿。そんな何気ない日常の光景に触れることで、心がやすらぐことでしょう。
ポルトガル旅行のベストシーズンはいつ?気候とイベントで選ぶ
ポルトガルは比較的温暖な気候で、年間を通じて旅行しやすい国ですが、旅の目的により最適な季節は異なります。気候の特徴や季節ごとのイベントを理解して、自分に合った訪問時期を見つけましょう。
ポルトガルの気候:地域ごとの違いと季節ごとの傾向
南北に細長い地形を持つポルトガルは、地域によって気候が大きく異なります。
- 北部(ポルト周辺): 夏は涼しく過ごしやすい一方で、冬には雨が多く冷え込む傾向があります。海洋性気候の影響が強く表れます。
- 中部(リスボン周辺): 一年を通して温暖で過ごしやすい地中海性気候で、夏は強い日差しがあっても乾燥しており快適です。
- 南部(アルガルヴェ地方): ヨーロッパ有数のリゾート地として知られ、年間約300日晴天に恵まれます。夏は暑くなるものの、海水浴には理想的な気候です。
春(3月〜5月)
春はポルトガル全域で花が咲き誇り、街並みが最も華やかに彩られる季節です。穏やかな気候で散策にぴったりの時期と言えるでしょう。特にリスボンでは、ジャカランダの紫の花が街を鮮やかに染める様子が見どころです。ただし、朝晩は冷え込むことがあるため、羽織るものを用意しておくと安心です。イースター(復活祭)の時期には、各地で宗教行事や祭典が催され、ポルトガルの伝統文化に触れる絶好の機会となります。
夏(6月〜9月)
夏は日照時間が長く、観光を思う存分楽しめる季節です。特に南部アルガルヴェ地方のビーチリゾートは賑わいを見せます。ただし内陸部では猛暑となることがあり、最高気温が40度近くに達することもあるため、暑さ対策が必須です。帽子やサングラス、日焼け止めを持参し、こまめな水分補給を心がけましょう。6月にはリスボンやポルトで盛大な「聖人祭り」が開かれ、街はイワシを焼く香ばしい匂いや音楽、人々の熱気に包まれます。
- リスボン: 聖アントニオ祭(6月12日〜13日)
- ポルト: 聖ジョアン祭(6月23日〜24日)
この時期に訪れるなら、ぜひ祭りの日程と合わせて参加してみてください。地元の人々と共に夜通し踊り明かす体験は、忘れがたい思い出となるでしょう。
秋(10月〜11月)
秋は夏の暑さが和らぎ、過ごしやすい気候に戻ります。夏に比べ観光客も少なくなるため、ゆっくり観光を楽しみたい人に適したシーズンです。特にドウロ川流域ではブドウの収穫時期となり、ワインセラー巡りやワイナリーツアーが人気です。黄金色に染まるブドウ畑の景観は格別です。11月には雨季が始まるため、折りたたみ傘などの雨具を持っておくと安心です。
冬(12月〜2月)
ポルトガルの冬は、他のヨーロッパ諸国に比べて比較的温暖ですが、特に北部では雨が多くなります。この時期はオフシーズンにあたり、航空券や宿泊費が安くなる傾向にあるため、費用を抑えて旅行したい人には狙い目です。クリスマスシーズンには街がイルミネーションで彩られ、クリスマスマーケットが開催されるなど華やかな雰囲気が楽しめます。防寒はもちろんのこと、雨対策として防水性のある靴や上着を用意すると快適に過ごせるでしょう。
ポルトガルへのアクセス方法と主要都市間の移動手段

日本からポルトガルへのアクセス方法と国内の移動手段について詳しくご紹介します。特にポルトガルの鉄道は、美しい車窓風景も旅の魅力のひとつです。鉄道ファンの視点も交えつつ、役立つ情報をお届けします。
日本からポルトガルへの航空路線
2024年現在、日本からポルトガルへの直行便は運航されていません。そのため、一般的にはヨーロッパの主要都市(フランクフルト、パリ、アムステルダム、チューリッヒなど)や中東の大都市(ドバイ、イスタンブールなど)での乗り継ぎが主流です。
- 所要時間:乗り継ぎ時間を含めて、概ね15時間から20時間程度となります。
- 航空券の探し方:スカイスキャナーやGoogleフライトといった比較サイトを活用し、乗り継ぎの待ち時間や料金を比較検討すると良いでしょう。早めに予約することで、比較的安価な航空券が見つけやすくなります。
ポルトガルの主要国際空港は、首都リスボンのリスボン・ウンベルト・デルガード空港(LIS)と、二番目に大きな都市ポルトのポルト・フランシスコ・サ・カルネイロ空港(OPO)です。旅の計画に応じて到着空港を選びましょう。
空港から市街地へのアクセス
- リスボン空港から市街地へ:
- メトロ:最も安価で便利な移動手段です。空港からレッドラインに乗れば、市中心部の主要駅まで約20~30分で到着します。切符は券売機で購入可能ですが、ICカード「Viva Viagem」を購入してチャージすると、1回券や1日券などをお得に利用できます。
- アエロバス(Aerobus):主要ホテルや観光名所を経由する空港バスで、大きな荷物があるときに便利です。
- タクシー・配車アプリ:料金はやや高めですが、複数人の旅行や荷物が多い場合には快適な選択肢です。
- ポルト空港から市街地へ:
- メトロ:空港と市中心部がメトロE線(ヴァイオレットライン)で直結しており、約30分で移動できます。
- バス:市バスや空港シャトルも運行しています。
- タクシー・配車アプリ:リスボン同様、快適な移動手段として利用されます。
ポルトガル国内の移動手段
ポルトガル国内の都市間移動には鉄道とバスが主に利用されます。それぞれの特徴を理解して、旅のスタイルに合わせて使い分けましょう。
鉄道(CP – Comboios de Portugal)
ポルトガル国鉄(CP)は主要都市を網羅し、快適かつ時間に正確な交通手段です。特にリスボンとポルトを結ぶ高速鉄道アルファ・ペンドゥラール(AP)は、最速約3時間で結び、多くのビジネス利用客にも支持されています。
- アルファ・ペンドゥラール(AP):ポルトガルの新幹線に相当し、リスボン、コインブラ、ポルトなどの主要都市を直結します。全席指定で、Wi-Fiや電源も完備。
- インテルシダーデ(IC):APを補完する都市間特急で、停車駅はやや多めですが主要都市間の移動に便利です。
- レギオナル(R)/インテルレギオナル(IR):各駅停車や快速に相当するローカル線で、地方の小さな町へアクセス可能。ゆったりした車窓旅を楽しみたい方におすすめです。
鉄道チケットの購入方法 チケットは駅の窓口や券売機でも購入できますが、事前にオンライン予約するのが圧倒的に便利です。
- オンライン予約の利点:
- 割引価格:乗車60日前から予約可能で、早期予約割引(Promo Ticket)により最大65%オフとなることもあります。
- 座席指定:窓側や通路側といった座席を選べます。
- 混雑回避:特に繁忙期は窓口が混雑するため、事前予約でスムーズに乗車できます。
予約はポルトガル鉄道(CP)公式サイトや公式アプリで行えます。英語対応かつクレジットカード決済可能です。予約後に送られてくるEチケット(PDF)をスマートフォンに保存または印刷しておき、車内検札時に提示してください。
長距離バス(Rede Expressosなど)
鉄道が繋がっていない地域やさらに安く移動したい場合は、長距離バスが役立ちます。ポルトガル最大手の「Rede Expressos」は国全体を広くカバーしています。
- メリット:鉄道より料金が安いことが多く、鉄道駅のない町へもアクセス可能。
- デメリット:鉄道に比べ所要時間が長く、交通渋滞に巻き込まれることもあります。
バスのチケットも公式サイトで事前予約・購入が可能です。
レンタカー
田舎町や海沿いを自由に巡りたい方にはレンタカーが便利です。ポルトガルの道路は整備されており、高速道路網も発達しています。
- 注意点:
- 国際運転免許証:日本発行の国際免許証が必要です。
- マニュアル車:欧州ではマニュアル車が主流なので、オートマ車を希望する場合は早めに予約しましょう。
- 有料道路:多くの高速道路は電子料金収受システム(Via Verde)を導入しており、レンタカー会社から専用機器を借りると便利です。
- 都市部運転:リスボンやポルトの旧市街は狭い道や一方通行が多いため、運転には注意が必要です。
ポルトガルで絶対行きたい!おすすめ観光スポット10選
ポルトガルには歴史的建造物から絶景スポットまで、見逃せない観光名所が数多くあります。今回はその中から特におすすめの10箇所を厳選してご紹介します。
1. ベレンの塔(リスボン)
大航海時代の繁栄を象徴するリスボンのシンボルともいえる建造物です。テージョ川の貴婦人とも呼ばれるその優雅な姿は、マヌエル様式を代表する傑作の一つに数えられます。かつては要塞として、また船舶の出入りを監視する灯台の役割を果たしていました。内部は狭いため、混雑時には入場規制がかかることがあるので、朝早く訪れるのが望ましいでしょう。塔の上から望むテージョ川や4月25日橋の景色は格別の美しさです。
2. ジェロニモス修道院(リスボン)
ベレンの塔と並んでマヌエル様式の代表格で、世界遺産にも登録されている壮麗な修道院です。ヴァスコ・ダ・ガマのインド航路発見を記念して建設が始まり、大航海時代の莫大な富を投じて完成させました。回廊にはサンゴやロープ、天球儀など海にまつわるモチーフの繊細な彫刻が施され、その美しさに息を呑みます。ヴァスコ・ダ・ガマの棺もこの地に安置されています。教会部分は無料で見学できますが、回廊は有料なのでオンラインで事前にチケットを購入しておくと長蛇の列を回避できます。
- 服装について: 修道院は神聖な場所のため、タンクトップやショートパンツなど露出の多い服装は控え、肩や膝を隠す格好が望ましいです。
3. サン・ジョルジェ城(リスボン)
リスボンで最も高い丘の頂に位置するこの城塞は、古代ローマ時代まで遡る歴史を持ちます。城壁の上からは、オレンジ色の屋根が連なるアルファマ地区とテージョ川を一望でき、リスボンを代表する絶景スポットとして知られています。特に夕暮れ時は町全体が黄金色に染まり、ロマンチックな光景が広がります。敷地が広いため、歩きやすい靴で訪れることをおすすめします。
4. トラム28番(リスボン)
リスボンを象徴する観光名物の一つ、レトロな黄色い路面電車です。特に28番はアルファマ地区やバイシャ地区など主要な観光エリアを巡る人気路線で、観光客だけでなく地元の方も多く利用しています。リスボンの日常風景を感じられる貴重な体験ですが、スリ被害が多発するため手荷物には十分注意してください。ICカード「Viva Viagem」の利用可能です。
5. ドン・ルイス1世橋(ポルト)
ポルトの象徴とも言える、ドウロ川に架かる壮大な二層式の鉄橋です。エッフェル塔の設計者ギュスターヴ・エッフェルの弟子によって設計されました。上層はメトロと歩行者用、下層は車両と歩行者用に分かれています。橋の上層からは世界遺産であるポルトの歴史地区と、その対岸に位置するポートワインセラーが並ぶヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの街並みを一望できます。特に夕方から夜にかけてのライトアップは幻想的で、鉄道ファンならメトロに乗って渡る体験がおすすめです。
6. レロ・イ・イルマオン書店(ポルト)
「世界で最も美しい書店」の一つに数えられる歴史ある書店です。ネオ・ゴシック様式の華やかな内装、中央にそびえる優雅な赤い螺旋階段、そしてステンドグラスの天井が織りなす幻想的な空間は、J.K.ローリングの『ハリー・ポッター』の着想の地とも言われています。人気が高いため入場は有料(約5ユーロ、書籍購入時に割引あり)となっており、公式サイトから事前に入場バウチャーを購入することを強く推奨します。
7. ペーナ宮殿(シントラ)
リスボンから電車で約40分の場所にあるシントラの郊外に位置し、まるでおとぎ話の世界から飛び出したようなカラフルな宮殿です。赤や黄色の壁が緑豊かな森に映え、ロマン主義建築の傑作として知られています。多様な建築様式が融合した独特のデザインは、見る角度によって異なる表情を見せてくれます。山頂にあるため、麓の駅からバスでアクセスするのが一般的。内部の豪華な王室の部屋も見学可能です。
8. オビドスの城壁
「谷間の真珠」と称される城壁に囲まれた美しい中世の村です。白い壁の家々をブーゲンビリアの鮮やかな花々が彩り、迷路のような石畳の小道が続きます。城壁の上を歩くことができ、そこから見るオレンジ色の屋根や周囲ののどかな田園風景は絵葉書のような美しさ。特産のさくらんぼのリキュール「ジンジーニャ」をチョコレートカップで味わうのが名物なので、ぜひ試してみてください。
9. アゲダのアンブレラ・スカイ・プロジェクト(アゲダ)
毎年夏(7月から9月ごろ)、ポルトガル中部の小さな町アゲダの商店街の空に色とりどりの傘が浮かぶアートイベントです。「アンブレラ・スカイ・プロジェクト」は、強い夏の日差しを和らげる目的で始められました。カラフルな傘のアーケードは歩くだけで心が躍るフォトジェニックなスポットです。開催期間は年によって変わるため、訪れる前に公式サイトで最新情報を確認しましょう。
10. ベナギル洞窟(アルガルヴェ地方)
ポルトガル南部のアルガルヴェ地方にある、海からのみアクセス可能な神秘的な海食洞です。洞窟の天井には大きな穴が開き、そこから差し込む太陽光が内部の小さなビーチとエメラルドグリーンの海面を照らし出し、幻想的な景観を作り出しています。周辺の町から出発するボートツアーやカヤックツアーで訪れるのが定番ですが、天候により洞窟内に入れない場合もあるため、コンディションのよい日を選んで訪問するのが望ましい絶景スポットです。
ポルトガルグルメを堪能!名物料理とおすすめレストラン

旅の楽しみの大きな一要素は、その土地ならではの食文化に触れることです。大西洋に面するポルトガルは、新鮮な魚介類をふんだんに使った料理が多彩で、日本人の味覚にもよく合います。素朴ながら奥深いポルトガルのグルメの世界へとご案内いたします。
絶対に味わいたい!ポルトガルの代表的な名物料理
- バカリャウ (Bacalhau)
ポルトガルの国民食とも称される干しタラの料理。塩抜きを施した上で調理され、そのレシピは365種以上にのぼると言われています。コロッケ風の「パシュティシュ・デ・バカリャウ」や、タラとジャガイモ、卵を炒め合わせた「バカリャウ・ア・ブラース」など、多彩な調理法で楽しめます。レストランに足を運んだ際は、まずバカリャウ料理をぜひお試しください。
- イワシの塩焼き (Sardinhas Assadas)
特に夏の聖人祭りの季節には、街の至る所で炭火で焼かれるイワシの香ばしい香りが漂います。脂がのった新鮮なイワシをシンプルに塩焼きにしただけの料理ですが、その味は絶品です。パンにのせて食べるのがポルトガル流のスタイルです。
- カタプラーナ (Cataplana)
南部アルガルヴェ地方を代表する郷土料理で、銅製の独特な鍋「カタプラーナ」を使い、魚介類や豚肉、野菜を蒸し煮にします。素材の旨味が濃縮されたスープはパンに浸して最後の一滴まで楽しみたくなる美味しさです。
- タコ料理 (Polvo)
ポルトガルではタコもよく食されます。やわらかく茹でたタコにオリーブオイルとにんにくをたっぷりかけた「ポルヴォ・ア・ラガレイロ」や、タコを使ったリゾット「アローシュ・デ・ポルヴォ」などが人気です。日本のタコとは異なるやわらかさにきっと驚かれるでしょう。
- フランセジーニャ (Francesinha)
ポルトの名物B級グルメです。パンにハムやソーセージ、ステーキを挟み、全体をチーズで包み込んだ上に、特製のトマトとビールを使ったソースをかけた非常にボリュームのある一品。通常はフライドポテトを添えて食されます。見た目のインパクトも大きく、そのコク深い味わいは一度食べるとクセになる味です。
甘く魅惑的な絶品スイーツとカフェ文化
- パステル・デ・ナタ (Pastel de Nata)
ポルトガルを代表するスイーツ、エッグタルトです。サクサクのパイ生地の中に濃厚でクリーミーなカスタードクリームがたっぷり詰まっています。シナモンや粉砂糖をふりかけて味わうのが定番です。リスボンのベレン地区にある「パスティシュ・デ・ベレン」は元祖ともいえる名店で、常に長い行列ができるほど有名ですが、並ぶ価値は十分にあります。もちろん、街のあちこちにあるカフェ「パステラリア」でも美味しいナタが楽しめます。
- ビッカ (Bica)
ポルトガルでエスプレッソの呼び名です。ポルトガル人は1日に何杯もビッカを楽しみます。食後や街歩きの途中に、気軽に立ち寄って一杯いかがでしょうか。1杯あたり約1ユーロと手頃な値段も魅力の一つです。
ポルトガル産ワインを堪能する
ポルトガルは世界的に有名なワイン産地の一つです。
- ポートワイン (Vinho do Porto)
世界三大酒精強化ワインのひとつで、ポルトを象徴するワインです。発酵の途中でブランデーを加えアルコール度数を高めることで、独特の甘みと豊かなコクが生まれます。ポルトの対岸に位置するヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアには多くのポートワインセラーが集まり、試飲付の見学ツアーも人気です。
- ヴィーニョ・ヴェルデ (Vinho Verde)
直訳すると「緑のワイン」ですが、色が緑というわけではなく「若いワイン」を意味します。微発泡でフレッシュかつフルーティーな味わいが特徴の白ワインで、アルコール度数も低めです。魚介料理との相性が抜群に良いです。
レストランでの注文方法とチップの習慣
- 注文の流れ
- 席に着くと、パンやオリーブ、チーズなどがテーブルに運ばれてくることがあります。これは「クーヴェルト」と呼ばれるお通しで、有料です。不要な場合は手を付けずに「ナオン・オブリガード(結構です)」と伝えましょう。
- メニューはポルトガル語と英語の併記が多いので安心です。
- 注文が決まったら、ウェイターを呼んで伝えます。
- 食事終了後は「ア・コンタ・ポル・ファヴォール(お会計お願いします)」と告げて支払いをします。
- チップについて
ポルトガルではチップは義務ではありませんが、良いサービスを受けた際には渡すのがマナーとされています。会計の5%〜10%程度、あるいはお釣りの小銭をテーブルに置いていく形が一般的です。
ポルトガル旅行の費用はどれくらい?予算を抑えるコツ
ヨーロッパの中でも比較的物価が安いとされるポルトガルですが、実際に旅行する場合、どのくらいの費用が必要なのでしょうか。モデルプランをもとに、予算の目安と節約のポイントをご紹介します。
7泊9日モデルプランの費用概算
リスボンとポルトを巡る一般的な7泊9日の旅を想定し、一人当たりの費用を見てみましょう。
- 航空券: 15万円〜25万円
- 旅行時期や航空会社、予約のタイミングによって大きく異なります。オフシーズンを狙ったり、早期予約をすることで費用を節約できます。
- 宿泊費: 7万円〜14万円(1泊あたり1万円〜2万円)
- 3つ星ホテルやキッチン付きのアパートメントホテルの利用目安です。ホステルのドミトリーを選べばさらに安く抑えることも可能です。
- 食費: 4万円〜7万円(1日約5,000円〜1万円)
- レストランでの食事のほか、現地の市場やスーパーで食材を購入し自炊したり、カフェで軽食をとるなどして調節できます。
- 現地交通費: 1万円〜2万円
- リスボンとポルト間の鉄道(AP)利用や、市内のメトロ・トラムの移動を想定しています。
- 観光・アクティビティ費: 1万円〜3万円
- 有料の施設入場料やツアー参加費用を含みます。
- その他(お土産や雑費など): 2万円〜4万円
合計: およそ30万円〜55万円
これはあくまで目安であり、宿泊施設のランクや食事の内容、ショッピングの有無などによって大きく変動します。
旅行費用を賢く抑えるポイント
少しの工夫で、ポルトガル旅行の費用はぐっと抑えられます。
- オフシーズンを狙う
航空券や宿泊費が高騰する夏のバカンスシーズン(7月〜8月)を避け、春(4月〜5月)や秋(9月〜10月)に訪れるのがおすすめです。気候も快適で費用も抑えられますし、冬ならさらに安くなります。
- アパートメントホテルやゲストハウスを利用する
キッチン付きの宿泊施設を選べば、自炊ができるため朝食や簡単な夕食を自宅のように楽しめます。観光地のレストランでの食費を減らせるほか、地元の市場「メルカド」での食材購入も旅の楽しみとなります。
- 「メニュー・ド・ディア」を賢く利用する
平日のランチタイムに多くのレストランで提供される「Menu do Dia(本日のメニュー)」は、スープ、メイン、デザート、ドリンクがセットで約10ユーロと非常にリーズナブルです。昼食をしっかりとって、夕食は軽めにするのが節約のコツです。
- 交通パスを上手に活用する
リスボンやポルトでは、メトロやバス、トラムの乗り放題となる1日券やチャージ式ICカードがあります。滞在日数や移動頻度に応じて購入すると、都度切符を買うよりもお得です。
- リスボン: Viva Viagemカード
- ポルト: Andanteカード
また、リスボンの「リスボアカード」は主要観光施設の入場割引も一緒に利用でき便利です。
- 無料の観光スポットを楽しむ
ポルトガルには無料で楽しめる場所が多くあります。展望台(ミラドウロ)からの美しい眺めを堪能したり、アズレージョが華やかな教会を訪ねたり、旧市街の路地を散策するだけでも十分に魅力を感じられます。
ポルトガル旅行をさらに楽しむ!お役立ち情報と注意点

最後に、ポルトガル旅行を安全かつ快適に楽しむために役立つ実践的な情報と、知っておきたい注意点をご紹介します。
準備と持ち物リスト
基本的な旅行用品に加え、ポルトガルならではの持ち物をピックアップしました。
- 歩きやすい靴:ポルトガルの街路は石畳(カルサーダ)が多く、坂道も多いため、スニーカーやウォーキングシューズなど、履き慣れた歩きやすい靴が必須です。
- 羽織るもの:夏でも朝晩は冷え込むことがあり、大西洋からの風が強い場合もあります。カーディガンや薄手のジャケットなど、さっと羽織れるものがあると便利です。
- 日差し対策グッズ:日差しが強いため、サングラスや帽子、日焼け止めは年間を通して欠かせません。
- 変換プラグ(CタイプまたはSEタイプ):ポルトガルのコンセントは丸穴が2つ並んだCタイプかSEタイプです。日本のAタイプの電化製品を使うには、変換プラグが必要となります。
- エコバッグ:スーパーでは買い物袋が有料の場合が多いため、持参すると便利です。
- ウェットティッシュ・除菌ジェル:外出先のトイレに石鹸がない場合もあるため、携帯しておくと安心です。
治安と安全対策
ポルトガルはヨーロッパの中でも比較的治安が良い国ですが、リスボンやポルトなどの都市部では観光客を狙うスリや置き引きが頻発しています。特に混雑したトラムや地下鉄、観光地では十分に注意しましょう。
- スリ・置き引きの防止策:
- バッグは前に抱えるように持ち、リュックは前に背負う。
- 貴重品は服の下に身に付けられるセキュリティポーチに入れる。
- レストランやカフェで席を離れる際は荷物から目を離さない。
- スマートフォンを操作しながら歩かないようにする。
万が一被害にあった場合は、すぐに最寄りの警察署で盗難証明書(Declaração de Furto)を発行してもらいましょう。クレジットカードやパスポートの再発行時に必要となります。
緊急時の連絡先
- 警察・救急・消防共通番号:112
- 在ポルトガル日本国大使館:パスポートの紛失や盗難、予期せぬトラブルなどの際に相談が可能です。渡航前に連絡先や所在地を控えておきましょう。詳細は在ポルトガル日本国大使館の公式サイトでご確認ください。
通信環境(Wi-Fi・SIMカード)
ホテルや多くのカフェ、レストランでは無料Wi-Fiが利用可能です。常時インターネット接続が必要な場合には、以下の方法を検討してみてください。
- 海外用Wi-Fiルーター:日本でレンタルして持参する方法で、複数人や複数端末での利用に便利です。
- 現地SIMカード:空港や街中のキャリアショップ(MEO、NOS、Vodafoneなど)で購入可能。比較的安価で、データ通信量が多いプランも選べます。
- eSIM:物理SIMの差し替えが不要で、オンラインで契約・設定ができる手軽な方法です。ただし対応スマートフォンが必要です。
その他、知っておくと便利なポイント
- トイレ事情:公共トイレは数が少なめです。カフェやレストラン、観光施設、ショッピングセンターのトイレを利用するとよいでしょう。場合によっては有料になることもあります。
- 水事情:水道水は飲めますが、心配な方はミネラルウォーター(Água Mineral)を購入しましょう。ガス入り(com gás)とガスなし(sem gás)があるので好みで選べます。
- 簡単なポルトガル語フレーズ:
- こんにちは:Olá(オラ)
- ありがとう:Obrigado(男性)/Obrigada(女性)
- すみません:Desculpe(デスクウプ)
- はい/いいえ:Sim(シン)/Não(ナオン)
- おいしい:Gostoso(ゴストーゾ)/Bom(ボン)
簡単な挨拶を覚えるだけでも、現地の人とのコミュニケーションがより楽しくなります。
ヨーロッパの西端、大西洋の風がそよぐポルトガル。その魅力は歴史ある街並みや美しい自然、美味しい料理だけではありません。どこか懐かしさを感じさせる温かな人々の笑顔と、ゆったりと流れる時間の中にこそ、この国の真の素晴らしさが息づいているのです。このガイドを手に、あなただけの特別なポルトガルの物語を紡ぎに出かけてみませんか。きっと、人生の忘れがたい一ページが加わることでしょう。Bom viagem!(良い旅を!)

